"And there's business value in fun"
Ruby好きとしても知られるMartin Folwerのblikiに「 ダイナミックタイピング 」というエントリがあります。このエントリでFowlerは、SmalltalkやRubyでのプログラミングは楽しい、と前置きした上で:
And there's business value in fun - after all motivation is a major factor in programmer productivity.
"そして、楽しさにはビジネス価値がありますーー結局、モチベーションこそがプログラマの生産性を左右するのです。"
と述べました。以来、私は「And there's business value in fun」を勝手に自分自身のミッション・ステートメントとしてきました。今回のRubyKaigi2006への実行委員としての参加し、当日ボランティアスタッフの皆さんと一緒に仕事をした経験は、私の信条に対する確信となりました。
準備期間はもちろんですが、とりわけ当日運営では士気の高いボランティアスタッフチームに支えられました。致命的な不備や事故が起きることなく、つつがなく全てのプログラムを実施することができたのも彼らのおかげです。士気が異様に高い当日スタッフチームは、私自身の当日とりまとめとしての段取りの悪さすら、却って自律的な働きへ転化させていました。特に、会場準備と撤収の手際は異常事態と呼ぶべき鮮かさでした。昨日今日一緒に作業している人たちの生産性ではありませんでした。この場を借りて、一緒にRubyKaigi2006で働けた皆さんに感謝します。ありがとうございます。
RubyKaigi2006の公式サイト の寄せられたアンケート結果には「スタッフがボランティアとは思えないほど素晴しかった」といった嬉しいご意見がありました(もちろん厳しいお言葉もいただいています)。「ボランティア」という言葉を雇用形態、すなわち「タダ働き」と捉えればその効果は驚くべきものですが、ボランティアとはそもそも志願兵や有志のことを指すわけで、self-motivatedな士気の高い人びとのことです。ボランティアとは雇用形態である以前に、姿勢(Attitude)である、ともいえます。
「結局、モチベーションこそがプログラマの生産性を左右するのです。」つまり、ボランティアには態度であるならば、そこには生産性の高さがビルトインされているとも考えられます。
カンファレンスも、決められた期間内に成果を出すという意味ではプロジェクトであり、「人がつくる」という意味ではソフトウェアです。言うまでもなく、運営に複数人が関わるという意味ではチームワークです。
RubyKaigi2006に関わった人たちの生産性の高さは、明かに士気の高さによるものです。では、彼らの士気の高さはどこから来たのか。Rubyと、Rubyに関わる人と人との間のつながりに貢献したいという気持ちが、高い士気として発揮されたのだと思います。なぜ、彼らはRubyと、Rubyに関わる人と人との間のつながりに貢献したいと思ったのか。それは、Rubyを使ったプログラミングが楽しいからだ、と私は確信しています。
「そして、楽しさにはビジネス価値があります」。今回の体験で私は自らの信条が実証されたと考えています。私の勤務先のような受託・SIを生業とする企業でのソフトウェア開発も、それが特定の期間内に成果を出すプロジェクトであり、「人がつくる」ソフトウェアであり、複数人が関わるチームワークである限り、「楽しさ」は生産性を左右する重要な要素です。その重要な要素としてのRubyは存在感を今後も強めていくと思います。今回のRubyKaigi2006でその予感と熱気を演出し、体験できたことを誇りに思います。
ここでもまた宣言しておきます。諸君、私はRubyが好きだ。
付録: オブジェクト倶楽部がRubyKaigi2006に提供したもの
RubyKaigi2006にはこっそりオブジェクト倶楽部のイベントなどで常用しているプラクティスを忍びこませました。誰も言ってくれないと思うので、自分で記録しておきます。
イーゼルパッド
巨大なポストイットです。ロビーでの付箋紙アンケートで活躍しました。当初は「オブジェクト倶楽部提供っぽさ」を出そうと「参加者ふりかえり(KPT)」をロビーで実施することも考えたのですが、文化的背景を考慮した結果、付箋によるご意見ご感想ボードとしました。しかし、利用者はいつだって提供側の思惑を軽がると越えてしまうもので、「map派 VS. collect派」をはじめとしたアンケートや、code snippetの貼り付けなど、Rubyistならではの「遊び」の空間として活用されましたのが面白かったです。
ライトニングトークス用タイマー
オブジェクト倶楽部イベントのライトニングトークスでいつも利用している水越さん作成のJavascriptは今回も活躍しました。当日に私が少し手を入れて、ライトニングトークス以外の通常セッションの一部でも使用しました。あの、DHHのタイムキープにも利用されたことはここに報告しておきます。
スタッフのふりかえり
当日の会場撤収後と、RubyKaigi2006事務局のWikiでは、いつもの「ふりかえり」を行いました。時間の制約上、若干のアレンジはしましたが、短時間でもの凄い数の「KEEP」「PROBLEM」「TRY」項目が書き連ねられました。このふりかえりの内容は、近ぢか実施されるスタッフの反省会の材料にする予定です。
(角谷)