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前回は、SRP(Single Responsibility Principle)を解説し、抽象(あるいはク
ラス)は一つの責務を持つべきこと、また、よい名前を持つことが本質的であ
ることを書きました。何人かの方から感想を頂き、特に名前の重要性について
賛同していただきました(ありがとうございました)。 さて、そこで今回と次回は趣向を変え、名前についてのエピソードを紹介したいと思います。 本来のソフトウェアの原則シリーズから逸れてしまうので、「ちょっと横道」です。 名前に関する横道1 JTP: Joshua Tree Principle この原則は私が大好きなデザインの本である、"The Non Designer's Design Book"(*1) の冒頭で、著者のRobin Williams(*2)が述べている法則です。 彼は、自分が住む町の図書館で植物図鑑をたまたま見ているときに、Joshua Tree という名前の木があることを始めて知りました。図鑑に写真入りで解説されて いるその木は、彼が長く住むこの町では見たことがない。しかし図書館から自 宅への帰り道、至るところでJoshua Treeを発見する。今まで一度も見たこと がない、と思っていた木を。 このエピソードの核心は、「名前を知ったとたん、それが見えるようになる」、 ということです。逆にいえば、 「名前がなければ(知らなければ)、それは見えない」ということ(*3)。 例えば、私執筆しているこの原則シリーズでは、ソフトウェアの原則を名前と ともに紹介していますが、原則に名前があること、これが重要なのです。名前 があるおかげで、その原則の輪郭がはっきりして記憶にとどまることができる。 これは、ソフトウェアパターンやプラクティスも同じですし、より小さいスケー ルではクラス名や変数名などすべての名前に当てはまるものです。 * * * 名前、それは一番重要な「意図を運ぶメディア」だと思います。 私も今回のエピソードは、この名前(Joshua Tree Principle)があったからこそ 覚えていたものです。 |
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[1] http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4895630072/xpjp-22 [2] あの映画俳優と同姓同名です(私は『フィッシャーキング』が一番好き) [3] The Non Designer's Design Bookでは、この話から始まり、デザインの原 則を4つ、名前とともに導入します。ちなみにこの本は、デザインに関す るすばらしい本です(書名に Theを使っても許される!) |
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つづき |