Date:  Wed, 11 Nov 2009 18:21:12 +0900
Subject:  【オブジェクト倶楽部: 2009-38号】
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                          No.303 2009/11/11

■ I N D E X
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┣【Topics】イベント開催のお知らせ&お申込み開始!
┣【特集】アレグザンダー祭りへの道 [2]
┣【プログラミング】IzPackで作るクロスプラットフォームインストーラ [5]
┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

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 〇 イベント開催のお知らせ&お申込み開始!
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お待たせしました!イベント開催のお知らせです。今回はなんと、12月・1月と
2ヶ月連続でイベントを開催します。どちらのイベントも定員制となっています
ので、ご希望のイベントにはお早めにお申込みください!

●オブジェクト倶楽部2009忘年会
  日時:2009年12月18日(金) 19:30開始
  場所:ダーツバーBENOA(ベノア)上野店
  詳細およびお申込みはコチラから!
  → /event/2009winter/

●オブジェクト倶楽部2010初春アレグザンダー祭り
  日時:2010年1月15日(金) 10:00開始
  場所:国立オリンピック記念青少年総合センター(代々木)
  詳細およびお申込みはコチラから!
  → /event/2010alexander/

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┗【特集】アレグザンダー祭りへの道 [2]

著者:懸田剛(オブジェクト倶楽部)

● 前回のあらすじ
前回は、クリストファー・アレグザンダーという人物と、ソフトウェア開発に
おける影響について、そして今まで学んだというだけでなく、これからも学ぶ
べきとろこがあるという展開まで述べました。今回は、ソフトウェア畑に目を
移し、ジム・コプリエン氏の紹介をします。
(前回の記事はコチラ → /ml-arch/magazine/312.html )

● ジム・コプリエン氏
ジム・コプリエン氏は、C++に関する数冊の著作を持ち、ソフトウェアパターン
のコミュニティで初期の頃から活躍されている重要人物です。氏が1994年に発
表した「開発工程の生成的パターン言語」[*1]は、開発プロセスや組織の構造
に着目したパターン・ランゲージです。
アレグザンダー氏のパターン・ランゲージが具体的な構成要素を対象にしてい
たのに対して、コプリエン氏はプロセスや組織といった目に見えないものに対
してパターン・ランゲージを適用したという点が非常に斬新でした。この「開
発工程の生成的パターン言語」は、形を変え、アジャイル開発の各プラクティ
スとして現在も使われているのです。後に氏は『Organization Patterns Agile
Software Development』という書籍を出版しています。[*2]

● The Nature of Order
アレグザンダー氏といえば、『パターン・ランゲージ』、『時を超えた建設の
道』の著作が有名です。しかし氏は、前述の2冊を含めた30年にわたる研究の成
果を、2001年から4冊の書籍にまとめて出版しました。それが『The Nature of
Order』です。そのアレグザンダー氏の『The Nature of Order』の出版以前に、
コプリエン氏はすでにその内容に言及していました。氏の1997年の講演ノート
「On the Nature of The Nature of Order〜『ネイチャ・オブ・オーダー』を
考える」がWeb上に公開されています。[*3]

コンプリエン氏は、この講演の冒頭でこう述べています。
「アレグザンダーのアイディアは、ソフトウェアパターンのコミュニティの20
年先を歩んでいる」

(講演当時はまた未出版だった)The Nature of Orderの中心となるのは、次の4
つだとコプリエン氏は言いました。それが「全体性と中心」「構造保存変換」
「全体性と生命の15個の基礎プロパティ」そして「シーケンス」です。
そしてコプリエン氏は、これらThe Nature of Orderで語られているプロセスが、
ダグ・リー氏(並列処理設計の第一人者)、リチャード・ガブリエル氏(プログ
ラミング言語Lispの第一人者)、ドナルド・クヌース氏(『The Art of Computer
Programming』シリーズ、文芸的プログラミングの著者、TeXの作者)らの「ジェ
ントルマンハッカー」カルチャー(1960年代にMITで生み出されたカルチャー)が
行っていた、プロセスに類似していると述べました。また、コプリエン氏は、
ソフトウェアカルチャーは文学の世界でいうところの「古典」、つまり携わる
人々にとっての共通のコミュニケーション基盤となる経験が存在しないとも述
べています。

「ソフトウェア開発者の何パーセントの人間が,Don Knuth のMIX や TEX のよ
うなソースコードのすべてを読んだことがあるだろうか.」

● East meets West
また、コプリエン氏は2000年に東京で「Software Patterns:East Meets West」
という講演を行いました。[*4]その中で氏は、アレグザンダーから得たインス
ピレーション、ソフトウェアパターンについて、多くの事柄を語りました。
そして最後に次のような趣旨を述べました。

「パターンはおそらく私自身の文化よりも東洋の文化のほうが遥かに向いてい
るというのが私の信念です。(中略)私が聞き知っていることから察して、日本
文化というのは、パターンに基づいたアプローチの故郷として、西洋文化より
もふさわしいのではないでしょうか。」

「Alexanderは、パターンを"The Gate"、つまり"門"と呼んでいます。その"門"
を抜け、理解と悟りの道を進みながら、「無名の質」あるいは「全一性」と彼
が呼ぶところの質へと至るというのです。(中略)そこで、皆さんにお願いした
いのです。その道へ歩み進む手助けをしてください、と。」

この講演から、来年で早10年が過ぎようとしています。私達日本人は、コプリ
エン氏の言うとおり西洋よりもパターン・ランゲージに相応わしく、成果を挙
げたのでしょうか?彼らと共に前へ進むことができたのでしょうか?

さて、最近のコプリエン氏の活動に目を向けてみましょう。コプリエン氏は現
在デンマーク在住で、認定スクラムマスター講師としてトレーニングを数多く
行っています。また最近は、DCIという新たなオブジェクト指向設計手法を提唱
しており、各所で話題[*5]になっています。
また2010年には、『Lean Architecture』という書籍を出版予定です。[*6]

今回のオブジェクト倶楽部アレグザンダー祭りでは、コプリエン氏に、アレグ
ザンダーの理論とソフトウェア開発との関わりについて、「East meets West」
以降の活動について、そして今後のソフトウェア開発の向う道について、熱く
語って頂きます。(懸田)

[*1] http://users.rcn.com/jcoplien/Nippon/OrgPatternsText/patternindex.htm
[*2] http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0321514521/xpjp-22
[*3] http://users.rcn.com/jcoplien/Nippon/NatureOfOrder/NoNoO_jpn.html
[*4] http://users.rcn.com/jcoplien/Nippon/EastMeetsWest/index.html
[*5] http://www.infoq.com/jp/news/2009/05/dci-coplien-reenskau
[*6] http://www.amazon.co.uk/o/ASIN/0470684208/
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┗【プログラミング】IzPackで作るクロスプラットフォームインストーラ [5]

こんにちは、村上です。前回はAntを利用してIzPackのコンパイルするための設
定とLicencePanelの説明を行いました。今回はTargetPanelの説明をします。

● 訂正
前回、Antを利用したインストーラのコンパイル方法を紹介しましたが、紹介し
たAntのコマンド実行方法に誤りがありました。前回のant実行の記述は下記の
ように読み替えてください。

> ant build.xml (誤)

> ant -f build.xml (正)

● TargetPanel
TargetPanelを使うとユーザにアプリケーションをインストールするパスを選択
させることができます。使い方は単純です。下記のようにTargetPanelを指定す
るだけです。

--- install.xml(変更部分のみ抜粋) ---

        <panels>
                <panel classname="HelloPanel" />
               <panel classname="LicencePanel" />
                <panel classname="TargetPanel" />
                <panel classname="FinishPanel" />
        </panels>
        
------

上記のinstall.xmlでコンパイルを実行しinstall.jarを作成してインストール
を実行してみてください。インストール処理を進めるとLicencePanelでライセ
ンスが表示された次にTargetPanelが表示されます。TargetPanelはアプリケー
ションをインストールするパスを指定するフィールドが配置されて表示されま
す。フィールドには直接パスを入力することもできますし、フィールドの右側
にある参照ボタンを押下して表示されるファイルチューザーからパスを選択す
ることもできます。

intall.jarを実行するとインストールパスとしてC:\Program Files\apache-an
t-1.7.1がデフォルトで表示されます。デフォルトのインストールパスを変更し
たい場合は下記のようにリソースを指定します。属性idにTargetPanel.dirを指
定します。属性srcに指定するTargetPanel.dir.def(名前は任意)はデフォルト
のインストールパスを記述したテキストファイルです。

--- install.xml(変更部分のみ抜粋) ---

        
        <resources>
                <res id="TargetPanel.dir" src="TargetPanel.dir.def"/>
        </resources>

---

しかし、アプリケーションをインストールする対象プラットフォームはWindows
であったり、Unix系のOSだったりします。当然、それぞれデフォルトのインス
トールパスは異なります。TargetPanelにはOSのファミリによって異なるデフォ
ルトパスを指定することもできます。WindowsとUnix系OSで異なるデフォルトの
インストールパスを指定する場合、install.xmlは下記のように記述します。
属性idのTargetPanel.dir.windowsのwindowsの部分にOSのファミリを指定しま
す。具体的にはwindows、macosx、unixが指定可能です。

--- install.xml(変更部分のみ抜粋) ---

        <resources>
                <res id="TargetPanel.dir.unix" src="TargetPanel.dir.unix"/>
                <res id="TargetPanel.dir.windows" src="TargetPanel.dir.windows"/>
        </resources>

---

デフォルトのインストールパスを記述したファイルの例を下記に示します。

--- TargetPanel.dir.unix ---

/usr/local/ant

---

--- TargetPanel.dir.windows ---

C:\Program Files\ant

---

● DefaultTargetPanel
DefaultTargetPanelはソフトウェアを特定の場所にインストールしなければな
らないときに使用します。ユーザがインストールパスを変更することはできま
せん。ユーザにはパネル自体が表示されることもありません。
デフォルトのインストールパスはTargetPanelと同様の指定ができます。リソー
スで指定する場合の属性idにはDefaultTargetPanelではなくTargetPanelを使用
することに注意が必要です。

● まとめ
今回は、TargetPanelを使用してアプリケーションのインストール先を選択させ
る方法とDefaultTargetPanelについて説明しました。次回は、PacksPanelにつ
いて説明します。
それでは、次回までさようなら。(村上)
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┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

今週は「来年の手帳はもう買った?」のホントのところ。
今年も残り2ヶ月を切りました。手帳が売られてるのを見て、もうそんな時期か
と驚かれた方も多いのではないでしょうか。最近は9月・10月から始まる手帳も
あるので、とっくに購入済みという方もいらっしゃるかもしれませんね。

  もう買いました。
     /special/kininaru/vote?vol=268&choice=0
  まだ買っていません。
     /special/kininaru/vote?vol=268&choice=1
  買うかどうか迷っています。
     /special/kininaru/vote?vol=268&choice=2
  紙の手帳は使いません。
     /special/kininaru/vote?vol=268&choice=3
  スケジュール管理していません。
     /special/kininaru/vote?vol=268&choice=4
  それは秘密です。
     /special/kininaru/vote?vol=268&choice=5
  ちょっと語らせて!
     詳細をこのメールに返信ください!!

アンケート結果はオブジェクト倶楽部サイト上にて公開します。お楽しみに。
なお、前号「オブラブメルマガ、どこから読みますか?」の結果は公開中。ぜ
ひご覧下さい。
⇒/special/kininaru/vol267/PlonePopoll_results2

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┗編集後記

こんにちは、編集人のナガタユウコです。「今年は秋イベントはないの?」と
のご質問をいただきつつも沈黙を守っていたオブラブですが、今回はなんと!
2ヶ月連続でイベントを開催します!しかも年末年始を挟むスケジュール・・・
果たして無事開催できるのでしょうか?!Topicsにてイベントのお知らせ&お
申込み開始のご案内をしています。イベント会場にてみなさまとお会いできま
すことを楽しみにしておりますので、ぜひぜひお申込みください☆

今週の強引な一言
*** 心は二つ身は一つ(ことわざ) ***
思いは二様に分かれあれもこれもしたいが、体は一つで両方はできないこと。
TODOを書き出してみてその多さに焦ってしまうこと、よくありますよね。でも
一度にできることには限りがあります。一つ一つ着実に消化しましょう。
出典参考:故事ことわざ辞典 東京堂出版
(ナガタユウコ)

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