Rubyの今を知りたい!!
Author: | 懸田 |
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参加の経緯
RubyKaigi2006は当初、チケットが早々に売り切れたために、正直参加できるとは思っていなかった。たなぼたで初日だけ行けることになったので、直前で急遽参加することになったのだ。筆者のRubyに対する思い入れは結構深い。OOPをちゃんと理解したと感じたのは、「全てがオブジェクト」を標榜するRubyのおかげだと今でも信じている。思えば、eXtreme Programmingと自分を繋げてくれたのもRubyなのだ。Rubyは今の自分の背景に色濃く影響している言語であり、環境であるのだ。
それから数年後、昨今のRuby on Railsの流行には正直乗り切れていない状態ではあるが、今のRuby界を体感するために、カンファレンスに参加してみた記録である。
イベント会場印象
まず会場に入って驚いたのは、パンフレットの出来が素晴しいこと。アイコンを駆使した説明とセンスのよいシンプルなデザイン。自分もコミュニティベースのイベントを何度も運営側で参加しているが、ここまできっちりパンフレットを作っているイベントも珍しい。パンフレットから早くもRubyKaigiに対する主催者側の 本気 が強く感じられた。こういうイベントは参加するだけで貴重だ。イベントスタッフには、オブラブメンバーや知人がいたが、それぞれ非常に忙しそうに動いていたのが印象的だった。
挨拶、そしてセッション
日本Rubyの会会長の高橋氏による挨拶があった。氏は海外のRuby Conferenceに皆勤参加しているそうだが、日本発の言語でありながら、国内ではなく海外で単独カンファレンスが実施されていたのは複雑な思いであっただろう。筆者も京都で開催された Perl/Ruby Conference 、東京で開催された YARPC (Yet Another Ruby/Perl Confercence)に参加したことはあったが、いずれも他コミュニティとの共同開催ということもあり、今回の単独開催の意味を一層強く感じた。
引き続き高橋会長のRubyの歴史セッションへ。これは筆者にとっては非常に懐しいネタが多く楽しめた。「オープンソースのピュアオブジェクト指向スクリプト言語 Ruby」から、「Ruby on Railsが動くLightweight LanguageのRuby」への世間の見方が急速に変ってきたのがよくわかる。「キャズム」によってRubyの広がりを説明していた点も非常に印象深かった。なぜなら筆者にとってはRubyはLinuxと同様に「オープンソース」の象徴のようなもので、自分が仕事で使うことは考えても、世間一般で仕事で使われることなど考えたことがなかったからだ。
続いてネットワーク応用通信研究所(NaCl)の社長である井上氏によるNaClの紹介。信念(オープンソース)と地域密着型企業を目指して活動する姿に、永和システムマネジメントと近いものを見た気がした。
次にまつもと氏の「The State of the Dominion」。Rubyはオブジェクト指向言語として自然な点が多く、ストレスフリーだ。Rubyの成功の理由はOOP人口が増えてきて、触る人が増えたからではないだろうか。そしてとても日本的な、言語仕様、つまり様々な言語から良い点をチョイスして(Perlっぽいのは失敗だそうだが)、バランスよく組み込んだ点かもしれない。あとは作者の言語に対する愛だろうか。
更に濃く...
ここからは午後のセッションに入る。まずRuby2.0についてのパネルだが、ここは非常におもしろい状態だった。以前まつもと氏は「言語で欲しいと思う機能はだいたいRubyに実装した」とインタビューで話していた記憶がある。つまり、言語的に求めるものは今のRubyで殆ど実装してしまっているということだ。
Rubyを使うユーザが増える中で、様々な要望も増えていくが、本質的な部分でまつもと氏が求めるものはそれほどないのではないか?という気がする。「Ruby2.0は燃料」とはまつもと氏の言葉だが、Rubyを開発し続けることを目的とするためのメタファではない本当の「燃料」なのかもしれない。そういう状況で、まつもと氏にRubyの1.xのような勢いで2.0の開発を求めるのは酷かもしれないと感じた。Ruby2.0はまつもと氏の内からの衝動とは思えないからだ。Ruby2.0をゴールとして進むのではなく、進むためにRuby2.0を必要とする点にそう感じる理由がある。しかし一方で、Rubyはこれはこれでいいのではないかとも思えてしまうのが不思議だ。
パネルの後は、とても「Rubyらしい」濃いセッションが続いた。どれもこれも素晴しく濃く、会場のどれだけの人がついていけたのだろうかと心配してしまうほどだ。しかしこの濃さが Rubyらしさ であり、Railsを生み出した土壌なのだ。詳細については他のレポートに譲るとする。
最後に
会場で「Rubyで仕事をしている人」というアンケートがあったのだが、その中の半数の人が手を挙げていたように記憶している。はじめてRubyを触った時に「もうJavaは書けないなぁ。Rubyで仕事できたらどれだけ幸せだろうに」と感じたことを思い出す。
機は熟した。Beyond Javaとしてかどうかはさておき、Rubyで仕事できる日が来たのか!と改めて実感した。2日目は参加できなかったが、「Rubyの今を感じるという」目的は達成できたことを記して筆を置くことにする。