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ウシー診療所

顧客の病気

Dr.
「次の方どうぞ」
患者
「失礼します」

・・・患者、椅子に座る
Dr. 「どうなさいました」
患者 「えぇ、明日が要求仕様の最終締め切りなんですが、なかなか全ての要求が洗い出せなくて・・・」
Dr. 「なるほど、なるほど。えっと、どんな開発プロセスを使っていますか?」
患者 「開発プロセスって、何ですか?」
Dr. 「システムを開発するときの手順みたいなやつですね」
患者 「あぁ、それなら・・・多分普通のやつです。ベンダーのSEさんが来ていろいろヒアリングしていくやつです」
Dr. 「なるほど、なるほど。もしかして『全部要求を出してくれないと開発できません。途中から仕様の変更は受け付けません』なんて言われましたか?」
患者 「えぇ、そのとおりです」
Dr. 「なるほど、なるほど。それで、こんなことも出来たらいいなぁ、なんて機能も書いているんですね」
患者 「えぇ、そのとおりです」
Dr. 「なるほど、なるほど。ではちょっとみてみましょうか」

・・・患者、背中を客席に向ける
・・・Dr.、患者の背中に病名の紙を貼る
Dr. 「なるほど、なるほど。思ったとおりだ、なんでも盛り込みたい病ですね」
患者 「なんですか?なんでも盛り込みたい病とは?」


なんでも盛り込みたい病


Dr. 「まぁ、ウォータフォール病の一種で、仕様が後で変更できないという不安から、なんでもかんでも使うかどうか分からない機能まで要求仕様に盛り込まなくては気がすまないという病気ですね。お薬出しておきますから。」

・・・Dr.、処方箋らしき紙を患者に渡す
・・・患者、それを受け取り薬剤師のところに行く
薬剤師 「はーい。お薬の説明しますね」


全機能の1/3しか使われない


薬剤師 「実は、リリース後のシステムで頻繁に使われるのは全機能の約3分の1なんですね、この薬を飲むと必要な機能だけを要求仕様に盛り込みたくなりますので、要求仕様を決めるときに飲んでくださいね。」
患者 「はい」
薬剤師 「お大事に」


開発者の病気


Dr. 「次の方どうぞ」
患者 「失礼します」

・・・患者、椅子に座る
Dr. 「どうなさいました」
患者 「えぇ、ライブラリを日々こつこつと作っているのですが、なかなかみんなが使ってくれなくて・・・」
Dr. 「なるほど、なるほど。最近どんなライブラリを作りましたか?」
患者 「引数を変えるだけで、テキストにも、XMLにも、HTMLにも、PDFにも文字を出力できるクラスです」
Dr. 「なるほど、なるほど。で、そのクラスは使われているのかな?」
患者 「まだ、使われていませんが、きっと、多分、もしかしたら、使ってもら えるかなと思って」
Dr. 「なるほど、なるほど。ではちょっとみてみましょうか」

・・・患者、背中を客席に向ける
・・・Dr.、患者の背中に病名の紙を貼る
Dr. 「なるほど、なるほど。思ったとおりだ。リッチ機能病だ。普段お使いの言語は?」
患者 「Javaですが」

・・・Dr.、患者の背中に病名の紙を貼る
Dr. 「さらに、なんちゃってオブジェクト指向病も併発と」
患者 「なんですか?その病気は?」


開発者の病気


Dr. 「リッチ機能病とは、使われるかどうか分からない機能をついつい作って自己満足に浸ってしまう病気です。なんちゃってオブジェクト指向病は、オブジェクト指向言語で非オブジェクト指向プログラミングをしてしまう病気です」
患者 「そうですか」
Dr. 「ところで、どっちのコードが美しく見えるかな?」


どっちがきれい?


患者 「左のほうがきれいですね」
Dr. 「あぁ、大変だ。緊急手術だ」

・・・Dr.、看護婦、患者を強引に床に寝かせる
Dr. 「麻酔」
看護婦 「はい」

・・・看護婦、患者のみぞおちを一発
・・・患者、ぐたっとなる
Dr. 「メス」
看護婦
「はい」
Dr. 「オブジェクト脳」

「はい」

・・・看護婦、「オ ブジェクト脳の作り方」を渡す
Dr. 「縫合」
看護婦
「はい」
Dr. 「ふぅ、危ないところだった。無事手術は成功だ」
看護婦
「お疲れ様です」

・・・看護婦、患者の頬を軽くたたく
・・・患者、気がつく
Dr. 「質問するよ、どっちのコードが美しく見えるかな?」
患者 「右のほうがきれいです」



全員 「ありがとうございました」





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