Date:  Wed, 29 Mar 2006 14:05:50 +0900
Subject:  【オブジェクト倶楽部: 2006-12号】
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                          No.133 2006/03/29

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┣【新着書籍】『プロジェクトを成功させる 現場リーダーの「技術」』
┣【PF】ふりかえりガイド[5] - ふりかえりが成功する理由
┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

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┗【書評】新着紹介!『プロジェクトを成功させる 現場リーダーの「技術」』

● 書名: プロジェクトを成功させる 現場リーダーの「技術」
● 著者名: 岡島 幸男
● 発行: ソフトバンククリエイティブ 
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797333502/xpjp-22

ぼくと何度もプロジェクトを共にした、永和システムマネジメントの岡島幸男
さんの本がでました。

IT業界の混乱は、形式的なプロジェクトマネジメント手法や開発技術では乗り
切れない。そこには、人間力のあるリーダーが必要である。本書には「才能」
としてのリーダーではなく、彼が現場での「悩み」から後天的に得た「技術」、
そして「勇気」のエキスが生の言葉で書かれている。

この本を読むと、彼と関わったプロジェクトのさまざまな記憶、深夜の議論や、
成功の美酒、失敗の辛酒を思い出します。

また、プロジェクトファシリテーションのいくつかの「見える化」実践につい
て、詳細に書かれたはじめての日本語の本ということになると思う。オブジェ
クト倶楽部のイベントでも何度も紹介している、「アクションかんばん」、
「朝会」、「ペア○○」、「ふりかえり(KPT)」などの、アナログなプロジェク
ト見える化手法も紹介されている。

思想的にも、いろんな良い事が書かれている。

      正直は割に合う

というトラブル解決の原則であったり、

      成長には気づきが必要

という経験からの原則認識過程であったり。

さらに、本書内で何度も繰り返される、目的・課題・アクションという問題解
決フレームワーク、そして、仕事の厳しさと楽しさ(やりがい)、についての3P
フレームワーク(Pressure, Pleasure, Pride)にはしびれました。 

筆者は中庸が大切と書いているが、この本の良さはまさに具体性と思想性の中
庸だとおもう。普通のエンジニアが「経験」として済ませていることを、さら
に一段抽象化して、重みのある言葉に結晶化させ、それを伝えようとしている。
具体的すぎると読者の場面で利用するのが難しく、思想的すぎると、たんなる
お題目になってしまう。

こういう「実の詰まった」本が、今後のSI業界を変えられるんじゃないか、と
いう前向きな気分にさせてくれる、嬉しい本でした。(平鍋)
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┗【PF】ふりかえりガイド[5] - ふりかえりが成功する理由

こんにちは、天野勝です。
前回は、ふりかえりのヒントをいくつかご紹介しました。今回は、ふりかえり
が成功する理由を考察してみます。

   *   *   *

●ふりかえりが成功する理由
アジャイル開発のプラクティスとしても、ふりかえりは、大変効果が高いもの
です。それだけではなく、様々な場面で有効に機能することが実証されていま
す。なぜ、そのように機能するのでしょうか。ここでは、その理由について考
察してみます。

(1)思考のベクトルがそろう
まずは会議の視点から考察してみます。

ふりかえりは、会議形式で実施されます。あるテーマを決めて、それをより良
くすることに主眼をおいて、参加者から意見を出してもらいます。

テーマは決まっているのに、なかなかそのテーマに沿って会議を進行できない
ことはありませんか。これは、参加者がそれぞれ違う方向に思考を向けてしま
うために起こる現象ではないでしょうか。話が脱線していって、いつのまにか
本題から離れてしまい、時間を無意味に浪費してしまうことになります。

そこで、ふりかえりでは、さらにテーマを絞って、思考のベクトルをそろえる
ようにしているのです。具体的には、KPTを使って、今は「Keep」について考え
る、今度は「Problem」について考えるというように、時間を区切ってより小さ
いテーマについて、参加者全員の意識を集中させて、意見を出してもらうので
す。これにより会議の時間をより効果的に使うことができるようになります。

(2)解決志向アプローチ
ふりかえりは、解決志向アプローチ(SFA:Solution Focused Approach)で運営
されます。SFAとは、ブリーフセラピーと呼ばれる、心理カウンセリングの手法
のひとつで、その名のとおり、原因追求ではなく、「解決」により目を向ける
ということが特徴となっています。

解決志向アプローチの中心原理[*1]として、以下の三つが挙げられています。

 (a)もしうまくいっているのなら、それを直そうとするな。
 (b)もし一度うまくいったのなら、またそれをせよ。
 (c)もしうまくいかないのなら、なにか違ったことをせよ。

どうですか、KPTととても似ていると思いませんか。カウンセリングの対象を、
人ではなく、チームまたはプロジェクトとしているだけと考えることができま
す。

(a)は、Keepに対応しますね。(b)は、Tryで挙がったことを試して、うまくいっ
たことをKeepに挙げるのに対応します。(c)は、Problemに挙がったことに対し
て、何かしらの解決策を挙げるのに対応します。

なぜ、この解決志向が有効なのかというと、原因を追究していくと、ダメな自
分に気づいてしまい、心理的にネガティブな状態になってしまうからです。ダ
メな状態についての言葉を聞いたり、言ったりすると、ネガティブ状態がより
悪い方向に強化されてしまいがちなのです。身体が熱っぽいときに、体温を測っ
て熱があることがわかると、急に体調が悪くなることはありませんか。それと
同じような効果です。要は気の持ちようなのですが、これがとても重要なので
す。

そこで、原因追求よりも解決策を考えて、未来の良い状態を考えることで、モ
チベーションを向上させていきます。

(3)みんなが意見を言える場である
人をほめたり、自分だけしか感じてないと思うような問題を挙げるのって、な
かなか勇気がいるものです。しかし、ふりかえりはそのようなことをするのが
当たり前である、そんな場なのです。

実際にふりかえりをした人の感想に「これまでは言っちゃいけない、言っても
意味が無いと思っていたのですが、言ってみたらほかの人も同じことを感じて
いたというが分かったのが収穫です。」「これまで言えなかったことが言えた
のですっきりしました。」というものがありました。

ふりかえりに参加することで、わだかまっていたものが吐き出せます。これも、
ふりかえりが有効に機能する理由の一つとして充分でしょう。

(4)自分のためにやる
参加者が決めたTry項目の実行に関しても考察してみます。

ふりかえりで大事なのは、自分たちで実行可能な解決策を考えることだと考え
ています。

Tryを挙げ、その数多のTry項目の中から実行するものを選択するところです。
このTryを挙げるのがふりかえりの参加者であり、実際に手を動かすのもふりか
えりに参加したメンバーであるというのがポイントです。

誰しも変わりたいと思っていながら、変えられるのは嫌だと思っているのでは
ないでしょうか。そこに、自発的に自分たちを変えるための行動を考えるとい
うのがマッチします。部外者が決めたアクションプランでは、それに従うとな
ると心理的な抵抗が大きくなってしまいがちです。そもそも、そのアクション
プランに現実性がなく、実行に移せないようなものかもしれません。

そこで、ふりかえりの参加者が、自分たちのために、自分たちで実行可能だと
思うアクションプランを決定することで、プロジェクトやチームが自分たちで
制御可能になるのです。はじめるのも、やめるのも自己責任であり、そこに、
強いコミットメントがあるのです。

また、誰がその実行にあたっての担当になるにしても、参加者の合意を得られ
た内容であれば、勇気を持って安心して進むことができます。そこで問題が発
生したとしても、みんなの助けを借りるのは難しいことではないでしょう。そ
もそも合意とは、

 合意=同意+サポート意思

です。無責任な同意だけではなく、いつでも困ったら助けますよ、というのが、
本当の合意なのです。

(5)ポジティブで始まり、ポジティブで終わる
ふりかえりの全体的な流れを見てみると、まず自分たちの活動の良いところを
捉えるところから始まり、こうしたらうまくいくのではないかという、希望に
満ちた状態で終わります。

ポジティブに始まることで、会議としての雰囲気が良くなり、意見を出しやす
くなります。問題点を挙げる時は、殺伐としがちですし、自分に非があるよう
なことはつい隠してしまいたくなります。しかし、良い雰囲気を作れていれば、
このような状況を解決、とまではいきませんが、幾分かは良い状況にすること
ができます。また、ポジティブに終わることで、次のアクションを早く試して
みたいという気持ちになるものです。ネガティブに終わると、ついその場から
逃げ出したくなってしまうことでしょう。

   *   *   *

次回は、ふりかえりの進め方について、シナリオ形式で、その雰囲気を伝えて
みようと思っています。(天野勝)

[1]:「短期療法解決の鍵」誠信書房(1994)
  著:スティーヴ ド・シェーザー、訳:小野 直広
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┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

今週は「今いくつのプロジェクトに関わっていますか?」のホントのところ。
この業界、忙しい人はとことん忙しいですよね。デキるという理由でも、人が
いないという理由でも、どんどん任されてしまうでしょうし、プロマネや管理
職系の方ならたくさんのプロジェクトを統括しているかもしれません。さて、
今みなさんはいくつのプロジェクトに関わっていますか?

  10以上です。
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  プロジェクトという括りでは数えられません。
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  それは秘密です。
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  ちょっと語らせて!
     editors@ObjectClub.jp まで詳細を!!

アンケート結果はオブジェクト倶楽部サイト上にて公開します。お楽しみに。
なお、前号「メルマガの発行頻度はどれくらいが適当ですか?」の結果は公開
中。ぜひご覧下さい。
⇒http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vol98/PlonePopoll_results2
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┗編集後記(拡大版) 〜ありがとう、さとみさん特集〜

こんにちは、後継編集人のまにわです。前回お伝えしたとおり、今まで編集人
を務めていたさとみさんが、今回のメルマガをもってオブジェクト倶楽部から
卒業しちゃいます。。そこで、特別企画として「ありがとう、さとみさん」と
題しまして、メルマガ読者の方、ライター陣から集めたメッセージをご紹介し
たいと思います。もちろん、最後はさとみさん本人からのメッセージがありま
すよ!

まずは、いつもご愛読頂いている読者の方から、代表して1名の方のメッセージ
をご紹介します。

−パナソニック ITS 株式会社 廣木 肇(HIROKI, Hajime)さまより、ここから−

私がメールマガジンを購読し始めたのは、2005-17号からなのですが、以来、毎
週届くメールを楽しみにしています。特に、時間がなくて全部に目を通せない
時も編集後記だけは読んでいました。

実は、オブLOVE夜会の後に名刺をいただいたのですが、その時はあの編集後記
を書いている方だとは分かりませんでした。そんなこともあって、また日頃裏
方さん(失礼に当たらなければいいですが...)に光を当てるべきと思っている私
は、クリスマスイベントのライトニングトークスの終わりで、さとみさんがた
くさんの拍手をもらってるのを見て、他人事ながらうれしかったです。そして、
さとみさんを紹介した天野さんを含め、オブLOVE最高と思ったことを思い出し
ました。

ノベルティのカレンダーのデザイン、かっこよかったですよ。もちろんちゃん
と会社で使ってます。

お疲れさまでした。今後もますますのご活躍をお祈りしています。

−ここまで−

廣木さま、暖かいメッセージをどうもありがとうございました!なお、メルマ
ガへの掲載とともに会社名、ご氏名の掲載のご快諾を感謝いたします。

そして、ライター陣からのメッセージです。

長い間お疲れ様でした。新しい世界でも、そのさとみパワーを炸裂させてくだ
さい。(平鍋)

これまでオブLOVEを影になり、陽になり面倒を見てくれてありがとうございま
す。今後は、新しい目的に向かって、歩んでいってください。きっとオブLOVE
で培った仕切り力はどこでも通用すると思います。よりいっそうのご活躍を楽
しみにしています。(天野勝)

これまでオブLOVEのアイドルとしてがんばって頂き、ありがとうございました。
社外でどんどん顔見知りが増えていくさとみさんを見て、すごいな〜と感じて
ました。今後も、その明るさを武器にして、ご活躍されることを祈っています。
それでは、いつか大野で飲めることを楽しみにしています。(hiroshi)

「ひどい!ひどいわ。私を置いて遠くにいっちゃうのね。何度も原稿を落とし
たから、愛想をつかされちゃったのかな。私を見捨てないで〜 (>_<)」と、冗
談は置いといて、さとみさんの新天地でのご活躍を心からお祈りします。(^o^)/
(IENAGA)

春のお別れと言えば「卒業」とかが思い出されますが、個人的には柏原芳恵の
「春なのに」です。いやーあの頃は○学生で若かったなぁ〜、そうそうこの歌っ
て中島みゆきが作詞・作曲なんだよなぁ・・・って、あぁいつものように話が
それていく。。。。えっもう字数がない?!それじゃぁ一言、あの頃はオブLOVE
と言えばさとみさんだったねー、と語り続けられるぐらい今後も頑張りますの
で応援していてください!(きしだ)

いまのオブジェクト倶楽部のありようは、さとみさんが作ってきた部分が大き
いです、ホント。これからは新しいオブジェクト倶楽部のつもりでいろいろやっ
ていくので、さとみさんも新しいさとみさんとしてがんばってください。んで
また飲もう!(やっとむ)

さとみさんの門出を祝うかのように、全国に桜が咲きはじめました。いままで
オブLOVEを支えてきてくれてありがとう。これからもそのパワーを世のため、
そして自分のために使ってください(懸田)

ではでは最後に、さとみさんどうぞ!

こんにちは、編集人のさとみです。この度想いあって、編集人を卒業すること
になりました。みなさんからいただいた要望や叱咤激励のメール、イベントで
の笑顔は、私の活動力の源でした。みなさんに支えられ、有意義な日々を過ご
すことができたことを大変感謝しています。本当にありがとうございました。
このメルマガを含め、オブLOVEは今後も進化し続ける予定です。今後ともどう
ぞよろしくお願い致します。(さとみ)

今週の強引な一言
***犬も歩けば棒にあたる(ことわざ)***
うろうろすると、なにも悪さをしていなくても棒でなぐられる。余計なことを
しなさんな...では前回と同じか。現代では、うろうろ出歩くと思いがけぬ幸運
にめぐまれる、という意味にも使われるそうです。世間ではいろいろなイベン
トや勉強会をやっています。直接仕事の役に立たなそうなものでも、ためしに
参加してみると思わぬ発見や出会いがあるかもしれませんよ。
(まにわ)

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■ 編集代表:平鍋  健児
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