釘本と申します。
リスクマネジメントには多少詳しい積りの者です。
On Tue, 6 Apr 2004 12:46:52 +0900
HAMAI Kyoichi <k-hamai@....com> wrote:
> >「熊とワルツ」と併せて読んで欲しいのが「プロジェクト・リスクマネジメント
> >リスクを未然に防ぐプロアクティブ・アプローチ」(ポール・S・ロイヤー)で
> >ある。
>
> 「リスクを未然に防ぐ」ではなく、「リスクの現実化を未然に防ぐ」が
> 正しいと思います。
> 長さなどが制約されている本のタイトルに文句をつけるのはどうかと思うの
> ですが、リスクマネジメントの根本に関わることなので非常に気になります。
>
リスクとは色々な意味で使われる言葉ですので、ある程度文脈依存だと思います。
しかし、ビジネス用語としてややあらたまって使う場合、
1.何か好ましくない事が起こる(好ましい事が起こらない)可能性
と、
2.もしもそれが起こった場合の損害額
の積(掛け算)
~~~
です。これはJIS Q 2001 にも定義されている筈です。
従って、掛け算ですから、リスクを減らすには、
1.を減らす
2.を減らす
という二つのやり方が出てきます。
それぞれを、「リスクコントロールにおけるリスク予防、リスク軽減」と言いま
す。
リスクマネジメントの体系には、リスクに対応する別のアプローチの仕方につい
ての分類として、リスクコントロールとリスクファイナンスという分け方があり
ますので、上記の二つはリスクコントロールについての手法になります。
私はまだ「熊とワルツ」を読んでいませんが、「リスクを未然に防ぐ」という表
現は、リスク予防についてのものと思われますので、妥当と思います。
> 全体的なリスクは基本的に減らせないものと見るべきだと思います。
> あるリスクを回避すると別のリスクが増大します。「熊とワルツを」の中にも
> プロジェクトの開始が遅れることによりプロジェクトが間に合わないリスクが
> 高まる話がでてきますが、プロジェクトの開始が遅れるのは、無駄な
> プロジェクトを開始してしまうリスクを回避しようとするからです。
これは非常に不正確なご発言です。
端的にいえば間違えてます。
ソフトウェアの開発プロジェクトに色々なディペンデンシーが存在するのはそう
でしょうが、だからと言って何をしても全体のリスクが減らないというのは奇妙
です。
マネジメントとは、様々な職階における経営上のリスクへの対処、つまりリスク
マネジメントそのものであるという側面を持ちます。
何をしても全体のリスクが減らないなら、プロジェクトマネージャーという人は
何をしているのでしょうか。
そもそも、全体的なリスクが減らせなければ、人類の全ての「マネジメント」の
試みはただのバクチと同じということになります。
もし本当に「全体的なリスクが減らせない」ならば私など生きる気力さえ失いそ
うですが、老荘思想でも信奉されるのでしょうか?
ちなみに「リスク回避」というのも、リスクコントロールの一手法です。リスク
についてビジネス上の会話をするならば、用語ですので覚えておかれる方が良い
と思います。
リスク予防
リスク軽減
リスク回避
の三つがリスクコントロールだと思っても良いです。
火災保険の分野でたとえた場合、
リスク予防:家の外壁を燃えない素材にする(火災は類焼がほとんど)
リスク軽減:もし燃えても損害が少ないように、宝石や有価証券は家に保管せ
ず銀行の貸金庫に移しておく
リスク回避:家を持たない
リスクファイナンス(の中のリスク移転):火災保険をかけておく
となります。
リスクマネジメントでは、これらの手法を通常複数組み合わせて、リスクに対し
て「なんとかやりくりする」訳です。
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中小企業診断士 / 公認システム監査人
釘本浩樹 <kugimoto@....jp>
03DA D493 0919 6F03 6038 B786 1147 D751 3109 1001
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