奥村と申します。
ほぼ1年ぶりとご無沙汰になってしまいました。
「適応型ソフトウェア開発」の読書感想などを。
On 2003.7.14, at 02:28 PM, Hidehiko AKASAKA wrote:
> Adaptive Software Development
> - A Collaborative Approach to Managing Complex Systems
> の日本語翻訳本が出版されています。
>
> 『適応型ソフトウェア開発:
> 変化とスピードに挑むプロジェクトマネジメント』
> ジム・ハイスミス=著、ウルシステムズ(株)=監訳、翔泳社
>
> # 出版社(翔泳社)のページ
> http://www.seshop.com/detail.asp?pid=4158
ちょうどこの日に買ってきて読んでいました。
あまりのタイミングにびっくりしました。
いま(ざっとですが)読み終わった所です。
最近複雑系が熱いのでしょうか。
「複雑系」の文庫版を読んでから
もっとつっこんだ本がないかと探していたのですが、
ここ1年ぐらいでサンタフェの方々の本の和訳が
ちょくちょく見つかるようになりました。(それとも探し方が悪かったのかな?)
今年3月に出た「マッキンゼー戦略の進化」にも
複雑系理論が大分見えかくれしていますし。
ワールドロップを読んだときは大変興奮して、
「これから複雑系で世界が大きく変わる!」などと思っていたのですが、
最近になるまであまり「複雑系」の3文字を見ることがなく
寂しい思いをしていました。
そんなわけでASDについて
「複雑系理論を開発に応用したプロセス」との紹介をどこかで読んだ時から
ASDを紹介する本が訳されるのを心待ちにしていました。
# 英語は駄目なもので...
文章はかたくて、XP関連の本に比べて読みづらかったですが
(多分訳のせいではなくもともとかな?と思いました)
内容がとても面白く、お勧めです。
でも本好きかつ理屈好きでないと読み切るのは苦痛かもしれません。
XP関連の本ほど万人向きではないかも。
# XP本は薄さのためかとても読みやすいですね。
# 経験則からできたからかな...?
この本は引用が多く、T.デマルコの本やG.ワインバーグの本など
読んだ本からの引用でにやにやしながら読んでいました。
なんでかうれしくなりました。
本好きな方なら同じような喜びが得られるかもしれません。
さて、(ようやく)本の内容ですが...
期待していたほど(たんに的外れな期待だったのですが)
「複雑系としての開発チーム」の特性などについての
考察や研究についての記述はありませんでした。
が、もっと別な点でとても面白い本でした。
これまでのアジャイル関係の本は、ほとんどを
「プロジェクトをどうアジャイルに進めるか」
という記述に当てていたように思います。
それに対してこの本は、開発チームを複雑系として捉えた上で
「なぜ、アジャイルなのか」
といったことにとても大きなページを割いていました。
また、開発の進め方についての記述よりも
チームの作り方についての記述が大きな割合を占めていたのが
とても印象的でした。
# 私の印象なので、単に私がその部分ばっかり読んでいただけかも...
端的にいうと「メタアジャイル」みたいな部分が
とても大きなウェイトを占めていたように思います。
なぜアジャイルなのか、アジャイルとはどういう状態なのか、の様な。
文中には「アジャイル」と言う言葉はほとんど出ていませんでしたので、
私がそう読み取っただけかもしれませんが。
では最後に、あわせて読みたいと思った本、
読んでて良かったと思った本を紹介いたします。
すべて和訳済みのものばかりです。
複雑系関連:
「複雑系」文庫版(M.M.ワールドロップ、新潮文庫)
複雑系科学がおこり、発展し、研究所が作られていく過程を描いた
ルポタージュ。
とてもエキサイティングです。興奮します。(?)
文庫本2冊分ぐらいの厚さで、値段もそれくらいです。
ハードカバーもあるようです。そちらはよく知りません。
内容は同じはずなので、お好みで。
「自己組織化と進化の論理」
「カウフマン、生命と宇宙を語る」
(どちらもS.カウフマン 日本経済新聞社)
複雑系本に餓えていたいた時に国会図書館の分館でみつけて
ざっとチェックしたあとアマゾンで買いました。
ワールドロップで興奮して、もっと知りたいと思った方にお勧め。
「複雑系組織論」
(R.アクセルロッド/M.D.コーエン、ダイヤモンド社)
「適応型ソフトウェア開発」で和訳があるのを知り、アマゾンで買いました。
まだ最初の方しか読んでいません。これから読みます。
著者のどちらもワールドロップの本でみた名前です。それで興味を持ちました。
「収益逓増と経路依存―複雑系の経済学」
(W.B.アーサー 多賀出版)
これも「適応型ソフトウェア開発」で和訳の存在を知り、買いました。
こちらはまだ発送前。
著者は複雑系科学の創始者の一人です。
アマゾンの書評によるととても難しく、意味不明の部分もあるとか。
「マッキンゼー戦略の進化」
(名和高司/近藤正晃ジェームス 編著・監訳、ダイヤモンド社)
複雑系をふまえた経営戦略の本。複数のコンサルタントが寄稿している。
トップマネージャーにアジャイルを売り込むのに
ASDと併読すれば役に立つかも。
なんせ「世界一の経営コンサルタント会社」ですから、
ここの戦略論と絡めて説明できればはったりが効きます。
それ以外:
「ザ・ゴール」
「ザ・ゴール2」
「チェンジ・ザ・ルール!」
(E.ゴールドラット、ダイヤモンド社)
Theory of Constraintsを紹介するために
同理論の考案者によって書かれた小説。
「適応型ソフトウェア開発」を読んで通じるものがあるなー、と思っていたら
「ザ・ゴール」がしっかりと参考文献にあげられていました。
特に「チェンジ・ザ・ルール!」はソフトハウスが舞台なので、
興味深いかもしれません。
T.デマルコ全ての著書
とても通じるものがあります。基本的な部分は同じではないかと思います。
「適応型ソフトウェア開発」の中で何度か引用されていました。
G.ワインバーグの全ての著書
チーム作りについて書かれている著者と言えば、やはりこの人でしょう。
この方の本もいくつか引用されていたと思います。
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奥村 悠
mail: juok@....com
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