濱井です。
2002/07/09 01:52:41 +0900にt-honma@....jpさんが送られた
メールに関する返信です。
>> XPは、ソフトウェア開発の目的をまがりなりにも意識していますが、
>> CMMはほとんど意識していません。目的を意識せずに戦略は立てられません。
>> そういう意味で、XPの方がまだしも戦略的です。
>>
>> 戦略と戦術とでは、戦略の方が優先します。もし、XPとCMMとが対立したら、
>> XPを優先させるべきだというのが、私の考えです。
>
>「開発の目的」とはなにか?が重要になると思います。
>CMMでもXPでも、最終的には「お客様が提示した要求への回答
>(ソリューション)を提供する」ことが目的だと思いますが、いかが
>でしょうか?当然、同時に自社も儲けるのが前提になりますが。
目的は「提供」であって「開発」ではない。このことは、「開発」の効率
向上が必ずしも「提供」という目的の達成に貢献しないことを示しています。
それどころか、「開発」の効率向上は「提供」という目的の達成の障害
となるおそれすらあります。
このことは意外かもしれませんが、理解しづらいことではありません。
例えば、フルマラソンにおけるゴールタイムと10kmまでの区間タイムを
考えてみましょう。区間タイムが速ければ速いほどゴールタイムも速くなる
でしょうか。もちろん、そんなことはありません。区間タイムの向上は他の
区間のタイムの低下につながり、ある程度以上区間タイムを向上させれば
全体としてのタイムの低下につながります。スタミナは有限なので適切な
配分が重要なのです。
企業における、ヒト、モノ、カネといったリソースも有限です。
ある部分にリソースを投入するということは、他の部分に投入できたはずの
リソースを奪うことでもあります。開発のために、開発の効率向上のために
リソースを投入するということは、他のもっとリソースを投入すべきだった
かもしれない箇所からリソースを奪うことでもあるのです。
部分的な効率向上は、全体的な効率の低下につながる危険性が多分にある
のです。
細かいことを二つほど言うと。
「最終的」ということは、中間的な目的とかもあるのでしょうか。
ソフトウェア開発において、重要度の高い目的、重要度の低い目的、
長期的な目的、短期的な目的というような区別はできても、最終的な
目的、中間的な目的というような区別は無いと思います。
「お客様が提示した要求への回答(ソリューション)を提供する」
には、「満足」と「価格」の二つの条件が抜けています。
これらを無視できるなら目的の達成は誰でもできることでしょう。
>CMMの場合、経営側の責任(契約や要件定義、品質管理など)に重
>点を置いているため、XPよりも経営側の視点に近い気がします。
>そういった意味では、CMMの方が戦略的かもしれません。
トップが下す判断が常に戦略的とは限りません。旧日本軍など典型的な例
でしょう。戦略的に考えることは難しく、特に日本人は苦手のようです。
戦略的ではなく、戦術的に考えているケースは多いです。