村上です,こんにちは。
「ソフトウェア職人気質」の訳者ですが,この投稿は一読者としての立場
に立っています。
On Sun, 14 Apr 2002 01:27:43 +0900
だんのさんのメールより:
>あと、本書の中で少し疑問に思ったのが、「管理者よりも現場の開発者に
>報酬を多く支払うべき」という意見です。
この辺りが物議をかもす点には同意します。
(多く支払われる分には嬉しいんですけどね。 ^^;)
>どうも職人モデルでは、職人はプロジェクトのための人材を登用し、その
>チームで管理業務その他を行うらしいのですが、小人数チームのコミュ
>ニケーションコストは低いので、ほとんど考慮しなくてよいと考えている
>ように見受けられます。
職人がプロジェクトのための人材を登用するというシステムは,職人自身
が気持ち良くプロジェクトの責任を取れる状況を作り出すためのものだと
思います。 このため,このシステムを採用したからといって,職人がチ
ームの管理業務を任されることには直結しないと思うのですが。
もちろん,これによって従来では「管理」の職域にあった作業が職人側に
発生し,工数増につながるかもしれませんが,「考慮しなくてよい」とは
書かれていなかったと思います。 (職人気質が対象とするる開発規模は
十数人にも及ぶことがあるので,決して無視はできないと思う,,,)
しかし,そういった作業が「気持ち良くプロジェクトを進める」ために必
要なものであれば,それは見積もりに反映してでも職人が行うべきではな
いかと思います。
>しかし、それはやはり片手落ちのような感じがします。トムデマルコの
>著作中にも、いい管理者はやはり必要であるような記述が目立ちますし、
>いい管理者がいないと、職人はやはり報酬だけでは魅力を感じず別の職場
>に移るような気がします。
第9章「職人の管理」では,1章まるごと割いてこのシステムにおける管
理者の役割が述べられています。
# つまり職人には,命令したりコントロールしたりする開発者など必要では
# なく,開発者,ユーザ,顧客間の関係を円滑にするスキルを持った管理者
# が必要なのです。(9.1 より引用)
ということで,管理者にはしっかり管理の仕事が残されており,McBreen 氏
は「管理者不要論」を唱えている訳では無いと思います。
ということで。
むらかみ まさあき
P.S.
Pete McBreen 氏は次回作として XP シリーズの著作を執筆中です。
タイトルは "Questioning Extreme Programming"
詳細は→ http://www.mcbreen.ab.ca/index.html