平鍋です.
以前,合木さんから出た,
山田日登志さんの「現場のムダどり事典」を読みました.
合わせて,図書館で「トヨタ」関係の本を数冊読んでの感想です.
やはり,ハードとソフトの違い,目的の違いはあれど,基本的な思
想に共通点を多く見出します.
まず,大野耐一さんの言葉の引用です.
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企業内でも同様であって,一人ひとりの仕事に,いかに知恵をつけ
させるかの競争がないと,その人自身をダメにしてしまうのではな
いか....工夫の中から,自分で仕事に余裕を持つ,そして,ま
た工夫する.人間を,機械の一部のようにとらえた,あのチャップ
リンの映画と異なって,「自分で,自分の仕事に創意と工夫を加え
る」,そこに人間らしい仕事ができるのです.
− 大野耐一
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ここには,人間本意,モチベーションの重要性,反テーラリズムが
見えます.
その他,具体的に気付いた点です.
■ 品質を作りこむ
・100つくって検査によって90はねてもダメ
・一人ひとりがテストで品質を作りこむ
ムダは品質に関連しているということ,品質は一人ひとりのアク
ティビティ(例えばユニットテスト)で成り立っているということ.
■ 自働化(にんべんの働)
・現場の一人ひとりにラインを止める権限
・ユニットテストによる自己一貫性チェック
トヨタ生産方式では,作業員の頭の上にラインを止める紐が下がっ
ており,それを引けば機械を止められます(これはアメリカのライ
ンでは考えられない).不良を作る機械を動かし続けてはならいと
いうこと.
■ より顧客に近い側から生産を制御
・後工程引き取りによる「停滞のムダ」の排除
・明日必要かもしれないものは作らない(YAGNI)
カンバンの重要な点は,製品の流れが後工程からの pull
である,という点です.前工程からの push ではありません.
こうすることで,中間生産物をできる限り減らしています.
これが,XP の YAGNI に通じる印象を受けました.
また,ビジネス価値主導で,開発作業が制御される,という
点で,後工程引き取りとマッチしています.
■ 誰にでも見える進捗のアナログな管理
・「生産管理版,カンバン,あんどん」と
「タスク,ストーリーカード」
これが一番わかりやすい共通点でしょうか.
■ 一人ひとりに複数の役割
・多工程持ち
・アーキテクト,プログラマ,テスタという区別がない
一人が複数の工程を掛け持つ,と言う点は,工程で役割を分けない
というXPのやりかたに似ています.また,トラックナンバーの増加
という目的も,明示的にトヨタ生産方式で唱われています.
(役割で人を分けると,年休がとれなくなる,という言い方)
■ 体系付け
・「4つの手段」と「8つの方式」
・「4つの価値」と「12のプラクティス」
XPの「4つの価値」と「12のプラクティス」と以下にしめすトヨタ
生産方式の「4つの手段」と「8つの方式」というふうに体系化され
ている.
目的: ムダをなくす(コストの低減)
4つの手段:
ジャスト・イン・タイム
自働化
小人化
創意工夫
8つの方式:
かんばん
平準化
段取り時間の短縮
作業の標準化
機能レイアウト
改善活動と提案制度
目で見る管理
機能別管理
■ 思想全体を貫く性善説
前工程からは不良品は上がって来ない,とか,現場の改善活動
が機能する,とか,XPにも似た性善説があります.
以上
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