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Date:  Thu, 17 Jan 2002 15:02:00 +0900
From:  "M.Horiuchi" <horiuchi@....jp>
Subject:  [XP-jp:03009] Re: 生産量  (was CMM   と  XP)
To:  <extremeprogramming-jp@....jp>
Message-Id:  <000601c19f1c$8ca68af0$4813fea9@....jp>
In-Reply-To:  <ubsftzrbs.fsf@....jp>
X-Mail-Count: 03009

> "M.Horiuchi" <horiuchi@....jp> writes:
> > ソフトウェアの分析、客観的評価、定量化が真のテーマとするのは
> > 画一的な測定項目でソフトウェアを評価する事ではなく、むしろど
> > のような事柄に着目すれば、より実態に近い近似ができるか、とい
> > うことと思います。その方向に議論が進むのであれば何も口を挟む
> > つもりはありませんでしたが、現状の手法の近似精度があまりにも
> > 悪いことに絶望し、精度を高めるための議論さえ無意味とするので
> > あれば、いったい何が残るというのでしょうか。
>
> 濱井さんは方向性のことを言っていると思います。定量化はできなくても
> 定性的に記述はできる、つまり、何をもって価値とすべきか、という問い
> に対し「売上げへの貢献するということをソフトウェアの価値を高めるた
> めの1つの方向性とする」と考えるのは立派な定性的言明だと思います。
> (売上げに含まれる他の諸要素からの分離はできなくても)
>
> 特にその言明が社会において認識されていなければそれを知らしめること
> は有用な啓蒙といえるでしょう(すくなくとも私はなるほど〜と思いまし
> た)。
>
> あと、CMMなどでは客観的評価は、ソフトウェアそれ自体の価値を考える
> ことを完全に放棄してますよね。近似することすらあきらめているように
> 思います。

ですから私も「価値」を定量化すべきとは述べていないと思いま
す。価値を算出できるような公式はないとXP-jp:02995で書いてい
るように(そして濱井さん自身も述べているように)価値は市場
でしか決まらないのですから、工学が(少なくとも直接)扱うべき
ものではなく、ソフトウェア工学でもそれは同じです。

濱井さんは何度となく従来のソフトウェア工学の「間違い」とし
て「売り上げ」を扱ってこなかった点を上げていますが、それは
「価値」は工学として扱えないためです。無理に組み込めばすべ
てが不定となり、濱井さんが「客観的には〜できない」を連発す
ることになるのも当然です。客観的なことを扱うのが工学ですか
ら。

経済学的(?)な観点からソフトウェアを論じる事は、それに成功
し、さまざまな有益な事実が導き出すことができれば貴重な見識
と思いますが、いまのところ濱井さんが導いているのは、ソフト
ウェアの価値は客観的に定量化できない、という半ば自明なこと
のみのように思います。

結局のところ「価値」を扱ってこなかったことを理由に、現在の
ソフトウェア工学を大上段に構えて否定する一方で、「価値」を
組み入れた濱井さん流ソフトウェア工学は、「〜できない、〜で
きない」の連呼で何も有益な分析結果を導き出せないアンバラン
スさを私は指摘しているのです。(私から見れば当然の結果です。)

> CMMのレベルに基づいてソフトウェア価値について言及できるとしたら、
> 「プロセスがよければソフトの質もまあそこそこだろう」とか「反復可能
> なんだから、前より悪くなることはないだろう」とか、控えめに言っても
> 間接的なものであり、ソフトウェアの価値とは何か、という問いに対する
> 答えとしては、濱井さんのいうように「願望」といわざるをえないぐらい
> 根拠のなさそうなものです。まあ、そんな願望は抱く方が悪いです。

ソフトウェア工学が扱うのはソフトウェアとその開発プロセスの
うち定量化できる側面だけです。価値を丸ごと定量化するもので
あると幻想を抱いているのは、主としてソフトウェア工学を否定
する方々ではないかと。ソフトウェア工学が「定量化できないも
のは扱わない」ということを被害妄想的に「定量化できないもの
は切り捨てる」と勘違いしている方が多いように思います。ソフ
トウェア工学が扱わないものはその外側で(主観的に定性的に)処
理すればよいだけです。

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Michitaro Horiuchi / Access Co.,Ltd.
horiuchi@....jp / horiuti@....jp