濱井です。
2002/01/09 15:17:36 +0900にsatoshi@....jpさんが送られた
メールに関する返信です。
>> XPでは生産量はどうでもいいんですか?生産性はどうでもいいんですか?
>> 大いに関係があると思っているから書いているつもりなんですが。
>
>XPは、生産性を上げることができる方法かもしれませんが、どれだけ向
>上したかという計測はしませんよね。
>相対的に生産性の向上を体感できるだけで十分なのでは?(定量的に計測
>するのは困難なので)
「生産性」とは何か、それを向上させるためにはどうすべきかという
認識が合っていることが重要なのです。
各々が別のものを生産性と考えたり、生産性を向上させるための方策が
全く食い違っていたりすると、別々の目標に向かって努力することに
なり、それぞれの努力は相殺され、ほとんど無に帰すということさえ
起こり得ます。努力のベクトルが揃っていないと意味がないのです。
もちろん、努力のベクトルが全く見当違いでも意味ありません。
>> [XP-jp:02565]でも書いたように、従来のソフトウェア工学の間違いが
>> XPの足枷になっていると見られるケースもあります。
>
>ソフトウェア工学ではソフトウェアの生産量を規模で計測するのが適切
>ということになっているのでしょうか?
>#ファンクションポイントやユースケースポイントは?
ファンクションポイントやユースケースポイントも規模での計測と
認識しています。行数とは着眼点が若干違うだけです。
[XP-jp:02714]で以下のように書いています。
hamai>ソフトウェアとハードウェア(LSI)を以下のように対比させると
hamai>わかりやすいでしょう。
hamai>
hamai> ソフトウェア ハードウェア(LSI)
hamai> コピー 製造
hamai> コピー部数 生産個数
hamai> 行数 チップ面積
hamai> ファンクション・ポイント 素子数
>そもそも、ソフトウェアの生産量や生産性を定量化すること自体が難し
>すぎるのでは?
計測が難しいとか、計測できてもつかいものにならないというような
ことはあるかもしれません。金額ベースで生産量を計測しても、
ソフトが売れた時には開発者は辞めていたというようなことは
大いにありえますから。
>濱井さんはソフトの対価が生産量とみなしてはどうか、と主張している
>のだと思いますが、金額は生産量と無関係でしょう。
>フリーソフトやウイルス(笑)の生産量はゼロではありません。
多少の簡略化はやむを得ません。経済学のGNP(国民総生産)では、
フリーソフトや家事労働は価値ゼロとして計算します。それどころか
株の売買益などもゼロとして扱います。
科学法則を含め、現実を扱うものは、すべてある意味近似に
すぎません。必要な精度が得られれば充分です。
「生産」を「製品やサービスを顧客に提供する」経済行為として
考える分には、フリーソフトの生産量をゼロとして扱っても問題
ありません。
金額で生産量をあらわそうとする時の本当の問題点は、組み込み
ソフトウェアやサポート用に無償配付するデバイスドライバなどの
扱いです。
この場合でも値が不明の変数としてなら取り扱うことができます。
ソフトウェアの規模を生産量として扱おうとするとこれもできません。
矛盾が生じてしまいます。
>ソフトウェアの生産量として、ユースケースはひとつの指標になると思
>います。(前に誰か言ってませんでしたっけ?)
>ソフトウェアがどのようなサービスをユーザに提供するのか、が重要な
>のだと思います。
プログラマがソフトウェアに組み込む量と言えますから、生産量ではなく
むしろコストです。
生産量とは、ソフトウェア自体を計測して導き出せるものでは
ありません。