長谷川@テクノポートです。
----- Original Message -----
From: "Toru TAKAHASHI" <tooru6.takahashi@....jp>
Sent: Saturday, September 08, 2001 9:24 PM
> 高橋(徹)です。
>
> ""hasegawa" <hasegawa@....jp>"さんは書きました:
>
> > XPのメタファと一般的なメタファがあり、後者はさまざまな解釈ができ、
> > 実際、この議論は、アリストテレスの時代にさかのぼります。
> > メタファとは、日本語で「隠喩」です。これは比喩の一種です。
>
> 比喩の話しが出てきたので。
> 「オブジェクト指向システム分析設計入門」(青木淳著、SRC刊)
> 既に廃刊になってしまったようですが、著者のホームページに全文が掲載
> されています。
> http://www.sra.co.jp/people/aoki/IntroductionToOOAOOD/
> けっこう難しいことが書かれていて、理解するには至っていませんが、
> 比喩とオブジェクト指向設計の関係について書かれています。
> 設計を人に伝えようとする場合に、比喩を用いてコミュニケーションする
> という内容だと思います。
ここにあったんですね。
オブジェクト指向入門の手ごろな本を探していて、上記の本を
書店で探したりしていたんですが、どうもなくてどうしようかなと
思っていたところです。ありがとうございます。
どうもオブジェクト指向そのものに対する旬というか
そういうものが過ぎてしまって、入門する人に推薦できる
よい本が少なくなっているようです。
#ちなみに「例題による!!オブジェクト指向分析設計テクニック」
#の方は持っているんですが。でも、どうも「集団幻想」なんて
#言葉が出てくると、さめすぎているようで、ちょっと。
> > これは、作用を持っています。
> >
> > XPでメタファを使うということは、「メタファ(隠喩)の作用を利用する」
> > ということです。この場合、その利点と欠点が出てきます。
> > XのメタファとしてYを使う、という状況を考えると、
> > やはりXよりもYの方が何らかの点でよいのでしょう。
> > #多くは、その詳細を隠します。
>
> 自分が考えている何か(設計であったり意図であったり)を他人に伝えて
> 理解してもらうために、「メタファの作用を利用する」ということでしょうか?
> 例えば、メタファに設計情報が含まれてはないけれども、メタファの作用で
> 設計を理解することができるようになる、というような。
何を伝えたいのか、なんだと思います。
コーディングのこと、設計構造のこと、アーキテクチャのこと、
目標、コンセプト、ポリシー、スタンスのこと、それぞれで、
違ってくるように思います。
メタファは、確かにさまざまなレベルでも利用できますが、
やはり、「まずは全体」という場合に本領を発揮するのではないでしょうか。
コードのように、具体的ではっきりする場合は、そこまで必要とならない
ケースが多いように感じます。
全体の場合にメタファを利用するというのは、やはり詳細との関係かな、
と思います。詳細を纏め上げるために利用するような感じです。
#あくまで、「ために」であり、詳細の正確な対応ではないと。
そもそも、メタファというと類似性が取り上げられますが、
実際に両者の部分を列挙すれば、違いの方がはるかに多いものです。
平鍋さんが提示した「SETI の地球外生命体探索プロジェクト」のメタファ
「蜂の巣」を比較しても、合木さんの「ショッピングサイト」のメタファ
「森の中のキノコ取り」(これはなかなか生き生きしていていいなぁと
思いました)を比較しても、はるかに違いの方が多いです。
そうなると、メタファの作用というのは、そういった違いを排除し、
何か強烈な力を生み出すものと考えたほうがよさそうです。
> オブジェクト指向の設計過程で、他の開発者が作成した資料(UML)をレビュー
> する時、説明を聞いていてもなかなか理解することができませんでした。
> クラスが10前後、シーケンスや状態図を合せても10ページ弱の量でしたが、
> 頭の中に入ってこない、という感じでした。
> (全体が把握できて、動きがイメージできる、というものです)
> この時は、後になって動作するプログラムができて、それを使っている中で
> やっと動作がイメージできるようになりました。
> きっとよいメタファがあれば、理解が早かったのではないか、と思います。
他人が詳細に設計したものを短時間で理解するというのは、
通常、ほとんど無理のような気がします。個々のシーケンス図や状態図が
理解できても、部分的に散在しているだけで相対的な評価は難しいと思います。
こういう場合にも、十分メタファが活躍すると思いますが、
なかなかいいメタファが思いつかないものです。
> > こう考えていくと、私にはメタファは分析のためのモデリングの道具でもなく、
> > より正確なものを使って豊富にしていくことでもないように思えてきます。
> > さらに解釈がどうのこうのというでもないと。確かに、うまいメタファ、
> > まずいメタファというのがありますが、その評価基準は正確さや精緻さ
> > といったことではないと思います。
>
> 自分の意図したことを相手にイメージしてもらえるか、
> そのイメージがどれだけ早く、誤解が少なく、伝わったか、
> といったことになるのかと思います。
メタファはレトリックの世界のものなので、深く突っ込むとレトリックに
ぶつかります。レトリックは、単に芸術の世界だけのものではなく、
人間の認識に深くかかわっています。
リチャーズの相互作用説では、たとえるものとたとえられるものが
単に一方向のものではなく、どちらにも帰属しない新しい力を備えた
意味を与えるものといわれています。
つまり、類似性ではなく、一見結びつかないもの同士により、
新しい関係ができるという側面が重要かと。
これは世界の問い直しや新しい見方の提案でもあります。
#このあたりはレトリックの書物のほとんど受け売りです(^^;。
安井稔さんが面白いことを言っています。
メタファの機能は、それが一種の提案であり、真偽値を持たないと。
こういった不確定で間接的な表現を用いる理由は簡単で、
ほかに表現の方法がないから、つまり、メタファでなければ
言えない世界があるということ。生きのよいメタファの世界は、
そのたびごとに新しく切り開かれていく未知の世界だ、と。
そして、メタファを既存の表現形式の拡張として捉えるのではなく、
新しい意味の世界を創造するものとして捉えるべきものだと。
こうなると、メタファを提出すること自体、本当に創造的な行為の
ように思えてきます。
-- 長谷川(hasegawa@....jp)