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Date:  Sat, 8 Sep 2001 14:28:18 +0900
From:  "hasegawa" <hasegawa@....jp>
Subject:  [XP-jp:02534] XP のメタファ、航海士達の星座
To:  <extremeprogramming-jp@....jp>
Message-Id:  <017301c13827$158fa520$660aa8c0@gp6x866>
X-Mail-Count: 02534

長谷川@テクノポートです。

Metaphorのスレッド、すごいですね。
バグ・パターンの時は、ちょうど出張中で、
帰社したときは、ほぼ終わっていました。

XPのメタファがわかりにくいというのは、私も以前から
感じていたのですが、この一連のスレッドの意見を読んでいると
自分なりに捉えるることができたように思います。

XPのメタファと一般的なメタファがあり、後者はさまざまな解釈ができ、
実際、この議論は、アリストテレスの時代にさかのぼります。
メタファとは、日本語で「隠喩」です。これは比喩の一種です。
これは、作用を持っています。

XPでメタファを使うということは、「メタファ(隠喩)の作用を利用する」
ということです。この場合、その利点と欠点が出てきます。
XのメタファとしてYを使う、という状況を考えると、
やはりXよりもYの方が何らかの点でよいのでしょう。
#多くは、その詳細を隠します。

ただ、その結果、Yを分析・研究すれば、Xの方もよく理解できるか、
というと、そうでもなさそうです。こうなるともう、メタファではなく、
モデリングになってしまいます。剣が武器のメタファであっても、
剣の分析によって得られるものは限界があります。

というか、そもそもそういうことをしないためのメタファなんじゃないかと
思えます。根拠の明示化や対比の精緻化を抑止するための道具、
それでいて、何か肌にぴったりとくるというか、イマジネーションを
かきたてるものなんじゃないでしょうか。

MacでFDを吐き出させるとき、ごみ箱へドラッグするという例がありました。
確かに、じっくりと考えると、どうもミスフィットする何かがありそうです。
しかし、このミスフィットはメタファの世界でのものではないような気がします。
つまり、分析的思考の産物のような。

メタファの世界では、極端な省略やデフォルメがなされます。
FDの場合は、そういった世界でもっともごみ箱がフィットするんじゃないでしょうか。
つまり、すべてがある世界ではなく、限られたものしかない単純な世界、
これがメタファの世界で、その中で行う(野生の)思考なんじゃないかと。

スレッドの中で、ごみ箱でなく、出力ゲートを例を出されたとき、
Macの持つメタファの世界にあるものではないように感じました。
可能なものすべてがそろっている世界と比較するのは、
ちょっと違うんじゃないかな、と。
#これは本質ではないかも知れませんが、数回
#その操作をしてみると違和感がなくなるように思います。

こう考えていくと、私にはメタファは分析のためのモデリングの道具でもなく、
より正確なものを使って豊富にしていくことでもないように思えてきます。
さらに解釈がどうのこうのというでもないと。確かに、うまいメタファ、
まずいメタファというのがありますが、その評価基準は正確さや精緻さ
といったことではないと思います。

XPにとってのメタファを私なりに考えると、みんなが苦労せずに得られる合意点、
それがあることによって、何らかの方向感覚や適合性を評価できるもの、のように
思えます。これは開発者同士でも、顧客であろうと同じだと思います。
それと「そのメタファ」を使うことにより成員性というものができるようにも思えます。
このメタファを使う人こそ、そのチームのメンバーだと感じさせるものです。

精密なマッピングをして、細かなところの違いを指摘すると、
大抵、「それは、たとえなんだよ」と言われます。
メタファから自由度を奪うと、期待した作用は得られないと思います。
#金を生む鶏の童話とどこか似たものを感じます。

メタファは、その自由さ、解釈の多義性、そういったものの中に真意があるような。
見立てることの楽しさ、まさに航海士たちの星座、といったところでしょうか。

ソフトウェア工学という観点からは、ちょっと合わないかも知れませんが、
なんとなくXPらしいや、っていう感じがします。
#どちらかというと、夢の言語のような面をもっているような。
#そして、きっとパターン言語とも通じるようなものを感じます。

-- 長谷川(hasegawa@....jp)