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Date:  Fri, 02 Mar 2001 18:14:18 +0900
From:  yterada@....jp (Y.Terada)
Subject:  [XP-jp:01677] Re: XP で再利用できますか?
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <20010302085203936.AAA229@....jp@ginza>
In-Reply-To:  <00c501c0a2cb$914828a0$640aa8c0@....jp>
References:  <00c501c0a2cb$914828a0$640aa8c0@....jp>
X-Mail-Count: 01677

寺田@東工大 です.

> #一瞬、静かになったので、ドキッとしましたが(^^;。

すいません.
もう卒業なので,大学のメールを読む機会が減ってきているのです.
今後も返事が遅れることがあると思いますがご容赦ください.
3月下旬以降には完全に読めなくなってしまいますし.


> もうひとつは、名前の問題です。これは落とし穴ですが。
> 名前が付けられると、私達はそれを直接見ないで、自分の中にある
> イメージでそれを捉えるようになります。省力という点ではいいかも
> 知れませんが、実際にそこにあるものが良く見えなくなる場合もあります。
> この辺りは、「老子」などを読まれると、うむっと納得するかもしれません。
> #パターンランゲージの最後は、結局パターンランゲージを捨てることです(^^;。

う〜む,「老子」ですか.ちょっと哲学は苦手なんですが・・・.(^^;
具体的には,例えば「IT革命」という名前によって逆にその本質が見えにくくなっ
ている,というようなことでしょうか.


> ただ、私が言いたかったのは、デザインパターンが単純に、
> 再利用可能な部品を作っていくことのようには思えないと言うことです。
> やはり、legacyなものとの調和というもの、ライブラリとフレームワーク
> の組み合わせの自由、問題があってもこのようなシステム適合的発想が
> あるんだ、といったところがいいような気がします。
> #再利用というと全てがごっちゃにされてしまうよな気がします。

デザインパターンは「再利用可能な部品を作るための技術」ではない,というのは
そのとおりだと思います.誤解されているような気がするのですが,私は,デザイ
ンパターンそのものが再利用可能な部品であると思っています.つまり,目的や場
所は違えども,何度も繰り返し似たようなパターンを使うということは,デザイン
パターンそのものを再利用していることになる,ということです.


> XPが打開すると考えている根拠を述べることはとても難しいです。
> しかし、幾つかの徴といったものがあり、それが単なる方法論では
> ないものにしていると思います。たとえば「勇気」という言葉が
> 出てきます。私はパターンで、自分を信じることを取り戻したと
> 思っています。自信過剰というものとは根本的に違います。
> 
> これとは逆にオブジェクト指向は、私にはどうも自分を信じるなと
> でも言われているような気がします。長い間、オブジェクト指向に
> トライしてきたと自分では思っているのですが、いつまでたっても、
> 設計すると本当にこれでいいのかという疑問を断ち切ることが
> できませんでした。

なるほどです.XP やパターンは,自分の設計を信じる勇気と,途中で設計を変更す
る(リファクタリングする)勇気を与えてくれるということですね.
しかし,このご意見では XP が打開するのは「蜃気楼となっている再利用」ではな
くて「自分の設計に対する不信感」となっています.長谷川さんの意見を読み直し
ますと,「XP で再利用を言う必要はない」とおっしゃっていますね.これは,XP 
と再利用は根本的に異なるものであって,同じ土俵で語られるべきものではない,
という風に解釈してよろしいでしょうか?


> > 私には,「再利用」を簡単にあきらめてしまうことはできません.
> > 自分で作った行列・ベクトル演算ライブラリなどは,何度も繰り返し再利用し
> > ましたし,その結果として再利用の便利さを実感しました.その実感は決して
> > 「蜃気楼」ではなかったと思います.
> > ですから,今後もぜひ再利用を心がけていきたいと考えています.確かに再利
> > 用は難しいのかもしれません.しかし,だからといって諦めてしまうのではな
> > く,どうすれば再利用という名の暴れ馬を飼いならすことができるのか,考え
> > るべきだと思っています.
> 
> #どう言えばいいのか、迷いますしたが。
> 少しきつい言い方になるかもしれませんが、それって作るものを
> 既にあるものにあわせているだけじゃ?って気もします。
> 本当に作る側にとって、それは適合しているのか、もう少し突っ込めば、
> そういうことを考えることすら棚上げしてしまうことになるンじゃ?
> と言うことです。

申し訳ないのですが,いまひとつ長谷川さんの真意が読み取れないでいます.
長谷川さんはパターンに対して非常に肯定的な立場でいらっしゃると思います.そ
して,デザインパターンは,「既存のものを上手く再利用するための技術」あるい
は「legacyなものとの調和」であるとおっしゃっています.このような長谷川さん
のご意見を総合しますと,既存のものに合わせて(既存のものを再利用して)作る
ことに非常に積極的であるように思えるのですが,上記のご意見では突然に既存の
ものの再利用を否定してしまっています.一体どちらが真意なのか,教えて頂けな
いでしょうか.

「既存のものに合わせて作る」ことの善悪は,状況によるのではないかと思います.
芸術作品を作ろうとしているわけではないのですから,結局はコストに見合うかど
うかが判断基準になるのではないでしょうか.
お客さんの予算に余裕があるのであれば,要求にぴたりと合致するものを作り直す
のも良いかもしれません.しかし,予算が厳しいのであれば,多少は既存のものに
あわせた製品になるのもやむを得ないでしょう.既存のものを利用した方が信頼性
も向上しますし.

# この辺は実務経験がないので想像の域を越えませんが.

あとは,対象領域によって考え方が変わるのでしょうね.
確かに,例えば Web アプリケーションなどのような,今一番ホットで進化が速く,
顧客の要求も変化が激しい領域では,あまり「再利用」にこだわると既存のものに
縛られて新局面へのブレークスルーができなくなってしまうかもしれないですね.
私が作っていたのは,大学の研究などで使う数値計算プログラムが多かったので,
ちょっと雰囲気が違います.行列の演算方法は今後も絶対変化しないですから.行
列演算を再利用しても,ちっとも既存のものに縛られているような感じはしません
でした.