Date:  Wed, 12 Apr 2006 14:50:51 +0900
Subject:  【オブジェクト倶楽部: 2006-14号】
X-Mail-Count: 00141

       ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
       ┃                         ■┃
      ●┃● ● オ ブ ジ ェ ク ト 倶 楽 部   ■ ┃
       ┃                       ■  ┃
       ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■━━━┛
                          No.135 2006/04/12

■ I N D E X
┃
┣【新着書籍】『ユースケースによるアスペクト指向ソフトウェア開発』
┣【ツール】世界初のアプリケーションサーバと、
┃          それに影響を受けたプロダクト(4)
┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1 s t ■━
■
┗【書評】『ユースケースによるアスペクト指向ソフトウェア開発』

● 書名: ユースケースによるアスペクト指向ソフトウェア開発
● 著者名: Ivar Jacobson/Pan-Wei Ng 著、
            鷲崎 弘宜/ 太田 健一郎/鹿糠 秀行/立堀 道昭 訳
● 発行: 翔泳社 (2006/03/23)
● ISBN: 4798108960
  http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4798108960/xpjp-22

ついに出ました。ヤコブソンの本の日本語版です。ヤコブソンは、80年代後半-
90年代前半に「ユースケース」という新概念をオブジェクト指向に持ち込み、
設計以前の要求キャプチャに大きな貢献を果たしているが、今回は、アスペク
ト指向をユースケースに応用しようという野心的な試みだ。

ずいぶん以前から親しくしていただいている、鷲崎さん、太田さんが訳されて
いる(お疲れ様でした!)。

ソフトウェア分析・設計の新技術は、「実装レベルから発見される」ことが非
常に多い。オブジェクト指向も、もともとは単なる実装技術、プログラミング
の要素であった「オブジェクト」が、設計レベル、さらに分析レベルにまで
「侵食」して、現在の体系になったものだ。そして現在、オブジェクトの概念
は分析・設計・実装、とシームレスに繋がるようになった(そんなに簡単ではな
いが、そう見える)。

今回は、アスペクトというこれまた、実装レベルの技術を、ユースケースにま
で持ち込もう、という、新発想なのだ。しかも、これが相性がよい。

そういえば、2000年ころに、日本のJPLoPでも同様のアイディアを羽生田栄一さ
んが「ユースケース場」におけるユースケースの重ね合わせ、という言い方で
発表されていたと思う。そして、「AOPの発明者であるキクザレスと会ってこの
アイディアをぶつけてみたが、現在は実装技術としてしか考えていないの返答
だった」とおっしゃっていた。

今回はユースケースの発明者であるヤコブソン本人の手によって、ユースケー
スレベルにまで「アスペクト指向」という概念を援用する試みであり、とても
ワクワクするものである。

願わくば、大統一理論として、「オブジェクト」という主軸と「アスペクト」
という副軸によって分析・設計の上流から実装・テスト下流までが整理できる
と、今後10年のソフトウェア工学に1つの明るい光となるかもしれない。

ちなみに、ぼくもヤコブソンには2度ほどお会いしている。日本でのUMLフォー
ラムの合間に、いっしょに急いであたふた昼食をしたときに、刺身定食と焼き
魚定食のどちらかを選ぶとき、

「焼いている時間がもったいないから刺身で!」

と答えをしていた。おちゃめなヤコちゃん♪
(平鍋)
_______________________________________________________________________
この記事への評価にご協力をお願いします。
URLをクリックして、「ご協力ありがとうございました」のメッセージがご使用
のブラウザに表示されれば投票完了です。
良かった:
http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/estimate?vol=A001-12&choice=0
普通:
http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/estimate?vol=A001-12&choice=1
イマイチ:
http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/estimate?vol=A001-12&choice=2

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2 n d ■━
■
┗【ツール】世界初のアプリケーションサーバと、
            それに影響を受けたプロダクト(4)

4月に入って、アップルからビッグニュースが!?と期待してたんですが、あま
り動きがなく寂しいと思っていたら、IntelMac機でWindowsXPにブートするソフ
トを正式リリースするみたいですね。これで職場にMac開発環境が増えるのでは?
と、BootCamp[*1]の動向に興味津々のきしだです。

さてそんなマクヲタな話題はこの辺にしておいて、今回はEOFに影響を受けた製
品・ツールを紹介します。

まず、WebObjectsが最初に採用していた開発言語である、Objective-Cでは、
GNUStep Database Library(GDL)[*2]が有名です。GNUStepの関連フレームワー
クを使うことで、WebObjectsと同じような開発環境を得ることができます。な
お、現在リリースされているバージョン1.0は、EOF1.1と互換性が高いようです。
GDL2が開発中で、こちらはEOF3か4程度の互換性になるようです。現在0.9.1で
すので、興味がある人は安定版までもうちょっと待ちましょう。

さて次に紹介するのは、現在のWebObjects開発言語であるJavaのツールです。
有名なところではHibernateなんですが、GUIキットがない!ということで影響
度合いは低いです。私がEOFに最も影響を受けていると思っているのは、Cayenne
[*3]です。まんまではないにしろ、EOModelerに非常によく似たGUIモデラーで、
設定ファイルなど書かなくても、簡単にO/Rマッピングできます。またクラス名
にContextがあるところなんかも。。ただ基本的にO/Rマッピングに特化してい
るので、Webアプリケーションとしての、GUIフレームワークとの連携はどうで
しょうか?サイトではTapestryとの接続サンプルがあったり、Springとの連携
ができたりするので、工夫次第なのでしょうが、このあたり情報不足です。た
だ、O/Rマッパーとしての機能は十分に持っていますので、設定ファイルに泣か
されてきた方にはお勧めです。

続いてPythonですが、Modeling Framework[*4]というツールが、コンセプトと
しては近いものになります。ZOPEと連携できるようなので、Webアプリケーション
との親和性もありそうです。ただし、まだバージョンが0.9なのと、オフィシャ
ルページを見る限りGUIモデラーは無いようなので、それが残念ですね。また、
設定量が結構あるので設定弱者には心配です(汗)。

さてさて続いては、お待ちかね?のRubyです。実はRubyの場合、WebObjectsに
影響を受けたものは、SDS、sop、tapkit、lafcadioとあったのですが、どれも
開発が中断してしまったりしていて、動きはないようです。まぁ何といっても、
Railsがありますので、あえてWebObjects風でなくても良いと言えばそうですね。

最後はPHPです。PHPは5でオブジェクトプログラミングができるようになったの
ですが、やっぱりPHPは4という人が多いですね。そういう場合、あまり関係な
いわけなんですが、PHP5、Smartyをベースにして、CocoaとWebObjectsに影響を
受けたのがPHOCOA[*5]です。名前が安直な気もしますが、これでなかなかの優
れものです。O/R部分はPropel[*6]を使っているようです。

ざっと影響を受けた製品・ツールについてふれてきた訳ですが、Railsのように
新しい形のフレームワークが出てくる中でも、まだEOFを始めとしたO/Rマッピ
ング技術はまだまだ必要とされていて、でもなぜかEOFを超えられていないよう
な気がするのは私の思い過ごしでしょうか?

次回はWebObjectsの特徴のもう1つであった、「Webページ生成の合理化」側の
フレームワーク(WOF)について簡単に紹介したいと思います。(きしだ)

[1]: BootCampは現在期間限定で、アップルのサイトからパブリックベータ版
     を入手することができます。
     http://www.apple.com/macosx/bootcamp/
[2]: http://wwwmain.gnustep.org/
[3]: http://www.objectstyle.org/cayenne/
[4]: http://modeling.sourceforge.net/
[5]: http://phocoa.com/
[6]: http://propel.phpdb.org/
_______________________________________________________________________
この記事への評価にご協力をお願いします。
URLをクリックして、「ご協力ありがとうございました」のメッセージがご使用
のブラウザに表示されれば投票完了です。
良かった:
http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/estimate?vol=B005-3&choice=0
普通:
http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/estimate?vol=B005-3&choice=1
イマイチ:
http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/estimate?vol=B005-3&choice=2

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━3 r d ■━
■
┗【アンケート】気になるシステム業界 ホントのところ

今週は「オフィスに今、一番ほしいものは?」のホントのところ。新年度を迎
え、いろいろ異動や組織変更などがあった方、またピカピカの新入社員です、
という方もいらっしゃることでしょう。新しい環境に来たばかりの方も、前か
ら変わらず今のオフィスに居る方も、ちょっと周りを見渡してみて、どんなも
のが今、一番ほしいでしょうか?

  新しいPCやサーバーなど、マシン関係。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=0
  壁やパーティション、とにかく仕切るもの。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=1
  広いスペースや窓、開放感。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=2
  ホワイトボードや文房具。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=3
  いい雰囲気、活気、やる気。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=4
  観葉植物や空気清浄機、きれいな空気。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=5
  フリードリンクや自動販売機。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=6
  とにかく、人。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=7
  異性。。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=8
  それは秘密です。
     http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vote?vol=101&choice=9
  ちょっと語らせて!
     editors@ObjectClub.jp まで詳細を!!

アンケート結果はオブジェクト倶楽部サイト上にて公開します。お楽しみに。
なお、前号「今までで一番面白かったメルマガ記事は?」の結果は公開中。ぜ
ひご覧下さい。
⇒http://www.ObjectClub.jp/special/kininaru/vol100/PlonePopoll_results2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━--■--●--■
■
┗編集後記

こんにちは、編集人です。うちのオフィスに今、一番欲しいものは何でしょう
ね?私も考えてみました。12月に引越ししたこのオフィスも、早くも満員状態
だし、天野さんの机はまだ引越し荷物が片付いてないし、広いスペースなのか
な?と思ったのですが、よくよく考えて、深刻に足りていないのはやっぱり人
かなぁと思いました。オフィスを見回すとどこのチームもピークを迎えている
ところが多く、かなり忙しそうです(もれなく編集人も、ですが…)。前にご紹
介した、うちの自慢の和ジャスペース(畳敷きのリフレッシュスペース)でも、
連日アツイ感じのミーティングが繰り広げられていますよ。

今週の強引な一言
*** 鯉の滝登り(ことわざ)***
急流を登った鯉は竜に変身するという伝説があるそうです。あなたやあなたの
プロジェクトは、今とても逆境に立たされているかもしれません。とてもの急
流を登りきることはできないと思うかもしれません。でも登りきったときには、
想像もできない、新たな気持ちが味わえるかもしれません。頑張って立ち向かっ
てみませんか。
(まにわ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━--■--●--■
● ご意見、ご感想は         ⇒このメールに返信ください
〇 配信中止、アドレス変更は ⇒http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/help/
〇 免責事項、過去の記事は   ⇒http://www.ObjectClub.jp/community/object_ml/
■ 発行:オブジェクト倶楽部 ⇒http://www.ObjectClub.jp/
■ 編集代表:平鍋  健児
Copyright (c)2003-2006 オブジェクト倶楽部. All Rights Reserved.
powered by Eiwa System Management, Inc.