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Date:  Tue, 20 Jul 2004 22:23:46 +0900
From:  "Hideaki ONARU" <gomarine@....com>
Subject:  [XP-jp:05018] 右脳とXP
To:  <extremeprogramming-jp@....jp>
Message-Id:  <002801c46e5c$c95194b0$da3f70dd@gomarine>
X-Mail-Count: 05018

大鳴です。

# 今日たまたま某オブ脳MLにて右脳・左脳ネタが上がってて
# 「やられた!」と思いましたが
# 私も思いつきを投げてみます。

A. M. Krasnerの
「あなたにもできるヒプノセラピー」
(小林 加奈子・訳, VOICE, ISBN: 4900550434)
に面白い記述がありました。
# ちと長いですけど引用してみます。

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人類学者トーマス・グラッドウィンは、ふたりの船乗りが、
広い太平洋の小さな島から島へ小舟を操縦する方法を比較した。
ひとりはヨーロッパの船乗り、
もうひとりはフィリピン南東のカロリン諸島にある
トルク島出身の船乗りであった。

ヨーロッパの船乗りは、船の帆を張るまえに方角、緯度、経度、
島から島へのおよその所要時間などを書き込んだ計画書づくりからはじめた。
いったん計画書ができあがれば、あとは計画どおりに順を追っていけばいい。
そうすれば予定した時間に目的地に着ける。
彼は羅針盤や海図など、利用可能なすべての道具を使った。
たずねられれば船の航路も正確に説明できただろう。
ヨーロッパの船乗りの思考は左脳型だった。

いっぽうトルクの船乗りは、
目的地と他の島々との位置関係を思い描いて旅を開始した。
船を進めながら現在の位置を確認し、たえず方向を調整した。
全工程を通して、
彼は目印になる風景、太陽、風の向きなどをもとに位置を把握し、
その場その場で方向を決めていった。
出発した場所と現在地と目的地の空間的な関係を参考にして船を操縦した。
どうして道具や計画書なしでそんなにうまく操縦できるのかとたずねられても、
おそらく彼は言葉で説明できないだろう。
それは彼が言葉で説明することに慣れていないからではなく、
その作業はあまりに流動的で複雑なため言葉にならないからだ。
トルクの船乗りは右脳型だった。

西欧の文明では分析的に考え、その結果を言葉で表現することが強調される。
そのため総体的にいって左脳的である。
また、個人の内的な成長よりも社会の経済的な成長が重視される。
学校は社会に役立つ人材を育てる機関だから、
社会が工業化されるにつれて左脳的な訓練が多くなる。
教育システムの大部分は、芸術的な才能や直観的な思考をのばすことよりも、
言語的、合理的、時系列的な左脳を開拓するために設計されている。
脳の右半分はほとんど無視されているようなものだ。
人類が意識の複雑さと潜在的な可能性に気づくまでに何世紀もかかった。
研究がすすむにつれて、
私たちにはもっていながらまだ使っていない能力が
多く残されていることがわかってきた。

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(上掲書、pp.52-54)

きっと説明するまでもないと思いますが、読みながら思ったのは

・ウォーターフォール = 左脳的
・XP = 右脳的

ということでした。

# 「暗黙知」とか「技芸としてのプログラミング」といったキーワードも
# 右脳的なんですよね、きっと。
# DeMarco NightでDeMarcoさんがおっしゃっていた
# 「『鎧』と『機動性』のふれ」も
# 似たようなところがあるのかなあ、と思ったり。
# XPを会社で採用することの難しさが結構根深いところにあるのかも、
# という気持ちになってしまいましたが。


この本によると、人には「きき脳」があるとのことです。
きっとKent Beckの「きき脳」は右脳で、
XP賛成派の多くも「きき脳」が右脳なんじゃないかな、
と邪推したりもしました。
# 「きき脳」を調べるテストも載ってました。

《両方の脳が共同作業をするのが理想的だ。
 右と左の脳を統合できたら、
 あなたはさらに効果的にエネルギーと情熱をもって活動できる。》
(上掲書, p.61)

まるでPete McBreenの言葉と呼応します。

《私はソフトウェア開発というのものが、
 効果的なシステム調達を目的とした、
 芸術、科学、工学の創造的な調和であると考えています。
 そしてこういった考え方を語るには、
 ソフトウェア職人気質というメタファを用いるのが最善なのです。》
(「ソフトウェア職人気質」p.27)


すみません、以上思いつきでした。


大鳴