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Date:  Tue, 4 Mar 2003 20:04:00 +0900
From:  HAMAI Kyoichi <k-hamai@....com>
Subject:  [XP-jp:04160] Re: 記事紹介 	 : ピーター・コードが語る開発プロセスの選び方
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <iss.13de.3e648883.26c42.1@....com>
In-Reply-To:  <20030225211351.F1F3.FIRO@....jp>
References:  <20030225211351.F1F3.FIRO@....jp>
X-Mail-Count: 04160

濱井です。
2003/02/25 22:33:53 +0900にHirohide Yazakiさんが送られた
メールに関する返信です。

>で濱井さんは次に[XP-jp:04057]で
>
>k-hamai> 戦略は、戦闘の基本的な枠組みとなるものなので、成中に変化させるのは、
>k-hamai> まず不可能です。
>k-hamai> 
>
>と急に、突拍子もなく、突然に成中という文脈を根拠として出してこられた。

[XP-jp:04023]で「成中」ということに言及しなかったのは、「戦略と戦術
との混同」に私の関心があり、言及するほどのことはないと思っていたのと、
『孫子』を充分に読み直していなかったので、「成中」と明言できるほど
ではなかったためです。


>対して濱井さんは、[XP-jp:04032]にて
>
>k-hamai> 『孫子』における「兵」とは、戦争、戦闘、軍というような意味で、戦略とか
>k-hamai> 戦術とかいう意味はほとんど無いように思います。
>k-hamai> 「兵の形は水に象る」とは、成中の軍隊は水のようであるべきだという
>k-hamai> 意味のようです。水が高いところから低いところへ流れるように敵の強い
>k-hamai> ところを避け弱いところを攻めるべきだという意味のようです。軍の陣形と
>k-hamai> いったものに正しい形が決まっているわけではないという意味のようです。
>
>として、少なくとも水に象るの「兵」は「戦略」「戦術」という意味はなく「軍
>(隊)の陣形」という意味であるとして、私の解釈および[XP-jp:04023]の濱井
>さんご自身の
>k-hamai> 戦略と戦術を混同しているように思います。
>も否定されました。

「戦略と戦術を混同しているように思います」を否定したつもりはありません。
私が言ったのは、矢崎さんが戦略と戦術を混同しているという意味です。
「水に象る」の解釈と「戦略と戦術との混同」とは別々に成り立ち得る問題
です。


>対して濱井さんは[XP-jp:04023]で以下のようにかかれているとおり
>
>k-hamai> 戦略と戦術を混同しているように思います。
>(略)
>k-hamai> 敵や環境に合わせ、定まった手が存在しないのは戦術だと思います。
>戦略は変化しない、と主張されています(少なくとも冒頭の私の質問にきちんと
>ご回答いただけなければ私はそのように考えざるを得ないです)。

変わらないと言っているのは、「基本戦略」です。戦略が変わらないとは
言っていません。
[XP-jp:04080]でも以下のように書いています。

HAMAI>戦略は永久不変であると言ったつもりではなく、ほとんど変化しない、
HAMAI>ましてや「水のように」は変化しないという意味で言ったつもりでした。
HAMAI>変化しない極端な例として基本戦略をあげたつもりでした。


>次に2)の「成中」に戦略は変わるかどうかですが、私は成中であっても状
>況が変化して最初に立てた戦略がうまくいかなくなったら積極的に変えるべきだ
>と思います。変えるのは、別の戦略を立てて再度勝ちにいく、ということもある
>でしょうし、場合によったら、負けないため、あるいは負けをできるだけ最小に
>押さえるため、と、そのときの戦争の進み具合や状況によるでしょう。いついか
>なる場合においても単なる「後始末」にならざるを得ないとは考えません。

「逆効果」とか「傷口を広げる」とかいうことが考慮されていないように
思います。事前に充分な準備のできる段階で正しい判断ができなかったのに、
実施にも判断にも厳しい時間的な制約のある状況で正しい判断を下せる可能性
は低いでしょう。

将棋や囲碁なら一回の対戦ごとに完結していますから、大敗でも惜敗でも負け
は負けということで、戦略変更などの大逆転を狙った賭けをするのは妥当です。
しかし、軍事やビジネスにおいては、一回の戦闘、一回のプロジェクトで
終わりではありません。ある戦闘に勝つために他の戦闘を、あるプロジェクト
の成功のために他のプロジェクトを、犠牲にすることは通常許されません。


>k-hamai> XPにおいては、メンバを(短期間で)大幅には入れ替えないというのが戦略で、
>k-hamai> それが守れないようであれば、むしろ、従来の重量級プロセスの方が適切
>k-hamai> であるということです。
>
>それが守れなくなってもXPにこだわりつづける必要があるのでしょうか?むし
>ろ、それが守れなくなった(状況が変化した)から、別の戦略を採用すべし、と
>もいえるのではないのでしょうか。
>
>あるいは濱井さんは、メンバが大幅に入れ替わるというトラブル(状況変化)が
>おきても、XPが前提としている戦略を変えるべきではない、とおっしゃってい
>るかもしれません。メンバ変化という状況変化については重量級プロセスが前提
>としている戦略のほうが適合しているかもしれないが、XPが前提としている戦
>略を変えてはならない。

そういうことを言っているのではなく、「メンバが大幅に入れ替わる」という
のはXPが前提としている戦略が成り立たないということだから、XPの
プロジェクトでは、「メンバが大幅に入れ替わる」ようなことが起きないよう
にしろと言っているのですが。


>でも、それって本当ですか?XPへの盲信では?
>高々いえることは、メンバが大幅に入れ替わっても、まだ相対的にXPが有利で
>あるならばXPを採用すればいいというだけで、もし相対的にXPが不利な状況
>に変化したならば、例え成中(プロジェクトの途中)でも重量級、またはその
>状況に最も適合した戦略を前提とした他のプロセスを採用すべきという場合もあ
>るのではないでしょうか。戦略を変化させるべきでない例はあるかもしれません
>が、それをもって常に戦略を変化させるべきではない、という結論は導かれない
>でしょう。私なんか何故不利な戦略にこだわる必要があるかわかりません。

不利な戦略に拘っているのではなく、戦略の破綻はプロジェクトの破綻だから
戦略が破綻しないようにしろと言っているだけです。プロジェクトが破綻
したら基本的にあとはどう後始末をつけるかだけです。


>また、戦略の失敗が取り返しがつかないというのは普遍的ではないでしょう。そ
>のような場合もあるし、そうでない場合もある。最初にたてた戦略の失敗が取り
>返しがつかないようなケースならば、もちろん途中で状況が変わってしまった場
>合には、被害を最小にくいとめるような後始末にならざるを得ないかもしれませ
>んが、それは一般的な話ではないのではないでしょうか。また最初は取り返しが
>つかないケースでも、状況が変わって、取り返しがつくようになるかもしれない
>し。。

後から変更して間に合うのであれば、先に準備すべきではありません。先に
決定すべきではありません。準備したモノが無駄になるからです。YAGNI原則
はXPだけのものではないです。

必要になってから勉強して間に合うのなら、デザイン・パターンだろうが
何だろうが、必要になってから勉強すれば良く、前もって勉強しておく
必要などありません。前もって会社の費用で教育するなどお金の無駄遣い
です。必要になってからでは間に合わない可能性が高いからこそ、前もって
勉強しておくのです。前もって教育しておくのです。


>k-hamai> 失敗したら回復するだけの時間的余裕が無いようなことについて決定するのが
>k-hamai> 戦略ですから、変更できるとしたらそれは戦略ではないでしょう。
>
>これって、濱井さんの考えですか?それとも、戦略に対する広くオーソライズさ
>れたものでしょうか?

これは取り消します。「失敗したら回復するだけの時間的余裕が無い」
というのは、戦術の場合も珍しくないので戦略の特徴とは言えないから
です。


やはり、矢崎さんは戦略と戦術とを混同しているように思います。