Index: [Article Count Order] [Thread]

Date:  Mon, 3 Mar 2003 18:52:16 +0900
From:  HAMAI Kyoichi <k-hamai@....com>
Subject:  [XP-jp:04155] Re: 記事紹介 	 : ピーター・コードが語る開発プロセスの選び方
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <iss.3767.3e6325d8.2519b.1@....com>
In-Reply-To:  <20030226083802.B340.M-GOMI@....com>
References:  <20030226083802.B340.M-GOMI@....com>
X-Mail-Count: 04155

濱井です。
2003/02/26 10:02:41 +0900にGomi Masuoさんが送られた
メールに関する返信です。

>Hamai> 例えば、旧帝国海軍の大艦巨砲主義から航空主兵主義への転換が遅かったのは
>Hamai> 事実ですが、そう簡単に転換できるものでもないです。
>Hamai> 航空機を大幅に増やすのはお金と時間がかかります。それを操縦する
>Hamai> パイロットを増やすのはもっとお金と時間がかかります。航空機を大量生産
>Hamai> するための産業基盤が当時の日本では貧弱でした。クルマもバイクも運転した
>Hamai> ことのない当時の多くの日本兵をパイロットに育てるのは、ほぼ100%クルマを
>Hamai> 運転できたアメリカ兵をパイロットに育てるのより時間を要しました。
>
>確かにそうです。
>しかし、アメリカは大艦巨砲から航空主兵へ1年ちょっとで戦略を大転換しました。
>日本にはその国力がなく、指導すべき人たちにその能力が無かったというだけで
>「変更してはいけない」ということにはなりません。

国力の乏しい当時の日本が戦略を転換したところで、国力のさらなる低下を
招き、敗戦を早めた可能性すらあります。仮にそうならなくとも、国力に大差
のある両者が同様の戦略を採れば、国力に勝る側が勝つのは当然です。
戦略の転換は、戦争前に行っておくべきであって、開戦後に戦略を転換しよう
としても、手遅れだったということです。


>むしろ、「状況の変化」を機敏に察知して柔軟に戦略を変更していくことがよい結果にな
>るという事例の方が多いと思います。

そういう事例はほとんど無いと思いますが……。
アメリカが戦略を変更できたのは、日本も戦略を変更すべき状態だった
からで、もし仮に日本が戦争前に航空主兵へ戦略転換を終えアメリカが大艦
巨砲主義のままであったとしたら、アメリカが戦略を転換しても間に
合わなかった可能性が大です。

「状況の変化」を機敏に察知して柔軟に変更すべきなのは戦術であって、戦略
はむしろ、自分たちにとって都合のいい「状況」に変化させることに本領が
あります。「状況の変化」を作り出すことこそ戦略です。


>Kugimoto>戦略か戦術かなんて後付けでされるであろう評価は関係なく、先入観を排
>Kugimoto>して虚心ですべき事を判断し速やかになせ、という事でしょうか。
>
>その通りです。
>戦略・戦術が正しかったか否かというのは、結果が出てからではないと評価できません。

戦術はともかく、戦略の正しさは事前にかなりの程度までわかります。
個々の戦闘においては運不運に多分に影響されますが、戦争全体に大きく影響
することは滅多にありません。

戦争の勝敗は戦争前にかなりの精度で予測できます。『孫子』にも以下の
ように書かれています。

 それ未だ戦わざるに廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり。未だ
 戦わざるに廟算して勝たざる者は、算を得ること少なければなり。算多き
 は勝ち、算少なきは、敗る。いわんや算なきにおいてをや。吾れ此をもって
 之れを観るに、勝負あらわる。