Index: [Article Count Order] [Thread]

Date:  Wed, 26 Feb 2003 10:02:41 +0900
From:  Gomi Masuo <m-gomi@....com>
Subject:  [XP-jp:04109] Re: 記事紹介  : ピーター・コードが語る開発プロセスの選び方
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <20030226083802.B340.M-GOMI@....com>
In-Reply-To:  <iss.2bbc.3e5bf94c.1ac29.1@....com>
References:  <20030221205600.4FB1.KUGIMOTO@....jp> <iss.2bbc.3e5bf94c.1ac29.1@....com>
X-Mail-Count: 04109

濱井さん・釘本さん・皆さん
こんにちは。 五味です。

Hamai> 例えば、旧帝国海軍の大艦巨砲主義から航空主兵主義への転換が遅かったのは
Hamai> 事実ですが、そう簡単に転換できるものでもないです。
Hamai> 航空機を大幅に増やすのはお金と時間がかかります。それを操縦する
Hamai> パイロットを増やすのはもっとお金と時間がかかります。航空機を大量生産
Hamai> するための産業基盤が当時の日本では貧弱でした。クルマもバイクも運転した
Hamai> ことのない当時の多くの日本兵をパイロットに育てるのは、ほぼ100%クルマを
Hamai> 運転できたアメリカ兵をパイロットに育てるのより時間を要しました。

確かにそうです。
しかし、アメリカは大艦巨砲から航空主兵へ1年ちょっとで戦略を大転換しました。
日本にはその国力がなく、指導すべき人たちにその能力が無かったというだけで
「変更してはいけない」ということにはなりません。
むしろ、「状況の変化」を機敏に察知して柔軟に戦略を変更していくことがよい結果にな
るという事例の方が多いと思います。

Hamai> 『孫子』では、戦争に大変なコストがかかることから、戦争自体を
Hamai> 戒めています。戦略を安易に変えることはこれに反します。
Hamai> 
Hamai> 戦略の変更中は、戦略が存在しないような状態に陥る危険性があります。
Hamai> 戦略に固執して変更しないと同じくらい、安易な戦略変更は有害です

孫子の教えの大方針は「戦争をしないこと」が最良であり仰るとおりです。
しかし、「戦争をしないこと」と「戦略を変更すること」は同列には語れない
と思います。
濱井さんは「戦略に固執して変更しない」ことと「安易な戦略変更」は「同じぐらい有害」
とおっしゃている上記の発言から察すと、戦略を変更すること自体を否定してはいません。
その点は同意見です。たしかに、安易な戦略の変更は戒められるべきです。

Hamai> 『孫子』では、戦争や戦闘、軍隊という意味で「兵」という言葉を使っている
Hamai> ように思います。「兵」を戦略や戦術、政略、作戦といった意味で解釈しない
Hamai> と意味が通らないような箇所は見あたらないと思います。

「意味が通らない」ということはありません。
それほど、孫子の「抽象化」が良くできているということです。
読者の観点が違っていても、なるほどと思わせるところが孫子のすばらしいところだと思
います。
私は、「始計篇」や「作戦篇」は「兵」を政略・戦略と解釈した方が意味がよくわかると
考えています。

Kugimoto>戦略か戦術かなんて後付けでされるであろう評価は関係なく、先入観を排
Kugimoto>して虚心ですべき事を判断し速やかになせ、という事でしょうか。

その通りです。
戦略・戦術が正しかったか否かというのは、結果が出てからではないと評価できません。
実際に物事が動いている時にその渦中にいる人が、この戦略は正しいか否かを評価するこ
とは無理でしょう。先入観を排して虚心ですべき事を判断して「判断したらそれを信じて」
速やかに「徹底的に」なすというのが一番いいと思います。
私個人はこのとき最も必要とされる能力は「直感力」ではないかと思っています。
直感力とはいっても「思いつき」だけでやってはいけません。それなりの裏付けが無くて
はなりません。でないと安易な戦略変更になってしまいます。
システム開発なら、命を取られることは無いですから事が終わってから客観的に正しかっ
たのか否かを判断し、必要なら反省し改善すればよいと思います。
私は現在XPで開発を行っていますが、XPを選んだのはまさに「直感的」でした。

私は孫子もシステム開発に応用できると考えています。
「業務を改善する」という目的に対しては「できればコンピュータシステムを開発しない」
で行うことが最良であり、システム開発をしなければならないのであればいかにして開発
作業を行うかということです。15年ぐらい前からその考えで開発を行っていますが、今
でも孫子には「なるほど」と思わされる事が多々あります。

私個人は、XPの「変化を包容せよ」という言葉は「状況に合致しなければXPの内容を
変えていくことはもちろん、XPという手法自体を捨てることも考えなさい」と言って
いると解釈しています。XPをやり始めてから、実利的な効果が出ているのはもちろん
ですが、この「変化を包容せよ」いう言葉に最も魅力を感じています。