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Date:  Sun, 09 Feb 2003 17:05:34 +0900
From:  hiroki kugimoto <kugimoto@....jp>
Subject:  [XP-jp:04068] (長文ですすみません) Re:  記事紹介 : ピーター・コードが語る開発プロセスの選び方
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <20030209155441.7D77.KUGIMOTO@....jp>
In-Reply-To:  <20030130.012049.28486336.yyamano@....jp>
References:  <20030129231454.C176.KUGIMOTO@....jp> <20030130.012049.28486336.yyamano@....jp>
X-Mail-Count: 04068

釘本です。
やまのさん、皆さん、図書館からこんにちは。

先に、このメールの最後に詳しく書きますが下の引用部での私の発言
「システム工学」
「システム工学ご専門の方」
は、
「ソフトウェア工学」
「ソフトウェア工学ご専門の方」
と訂正します。


On Thu, 30 Jan 2003 01:20:49 +0900 (JST)
Yuji Yamano <yyamano@....jp> wrote:

> hiroki kugimoto <kugimoto@....jp> writes:
> 
> > > > システム工学40年ほどの歴史は、経営学100年の歴史から考え方を
> > > > 借りてばっかりです(これ知らないシステム工学ご専門の方やや多し)。
> > > > 結局ウォーターフォールは広義のテーラリングの一種。
> > > 
> > > そうなんですか。ソフトウェア屋さんが読んで、ああ、ここから
> > > 借りてきたんだってことがわかるような本とかないですかね。
> > > 
> > 必ず誰かそんな視点で書いていると思うので、気をつけて探しておきます。
> 
> よろしくお願いします。
> 

残念ながら、大きな書店や図書館で探した範囲では見つけることは出来ませんで
した。
ただし、色々と本を当たってみて、以下のように考えました。

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1.最近のソフトウェア工学での大きな論点は、特に下記二つではないでしょう
か。
A.よいソフトウェアを作るためには、どのような分析や設計をすべきか。
(何を作るかの確定のよりよい方法は?)
B.よいソフトウェアを作るためには、どのようなプロセス管理が行われるべき
か。
(どう作るかのよりよい方法は?)

誤解を恐れずごくごく分かりやすく表現すると、
A.・・・システムアナリスト試験の分野
B.・・・プロジェクトマネージャ試験の分野
です。
ココってご賛同頂けませんかね?ご賛同頂けたとして次へ。

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2.上記のAについては、昔のソフトウェア工学が十分に光ををあててこなかっ
たいわゆる「上流」分野ですから、経営学での到達点をどんどん取り入れていま
す。結局経営上の有用性の話ですからね。

例えばクリス・マーシャルの本を読んでも、殆ど「UMLで表現された経営学の本」
ですね。
このMLでちょっと盛り上がった「戦略と戦術」というのもそうです。

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3.上記のBについても、昔のソフトウェア工学が手薄だった部分です。

「ソフトウェア工学大事典」
朝倉書店、1998、ISBN4-254-12123-7、\65,000!
の「ソフトウェア工学の歴史」という記述(P737〜744)
によれば、80年代は「プロセス」の妥当性に話題が集まり、さらに90年代にはソ
フトウェア製品や生産に関心が移っている、という事です。

ここで、ソフトウェア工学の変遷についての視点としては、
・プロダクション環境
・プロセスコントロール
・プロジェクト管理
の3つをあげ、それぞれの視点での重要概念の変遷をあげています。
(別の図ではそれぞれ「生産」「プロセス制御」「プロジェクト管理」)

不勉強で何となくしかいえないのですが、そもそも
「コントロール」
「マネジメント」
という概念そのものが経営学での成果を応用したものだという事に気付きました。
つまり枠組みそのものを借りている部分がある、と。
「プロジェクト管理(たぶん原語はプロジェクトマネジメント)」なんか、「プ
ロジェクト」も「マネジメント」もどちらも主として経営学からの借り物です。
(そして経営学では主として軍事などからの借り物です。)

更に、この本で整理して記述されている内容を読むと
「コントロール」「マネジメント」の視点における最近のソフトウェア工学の個
別概念も、色々と経営学に関係していると感じました。


※上記の本、改めて読んでみるとやはりすばらしい本です。
余りにも値段が高い(&デカイ)ので購入を諦めておりましたが、今度お金が入っ
たら新しいパソコンを買うのを我慢して買ってみようか・・・

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以上です。

浅学を自覚しておりますので分かるかどうか不安に思いながら、MLに経営学とソ
フトウェア工学についてエラソーに書いた責任上、経営学と工学の区別を探ろう
として両分野の専門書を他にも色々と見てみました。

結果として、
「経営学」と「工学」
特に
「経営工学」と「システム工学」
の違いは、私にはむしろより分からなくなってしまいました。
(「システム工学」に「ソフトウェア工学」は含まれます)

個人的には、この二つの分野の違いは抽象レベルと対象領域への光の当て方(=
視点の取り方)の微妙な違いだけではないかと仮に結論付けてしまいました。
私はどちらも勉強してみようと思います。

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最後に、
このメールの最初の引用部分に私が書いている「システム工学」は、「ソフトウェ
ア工学」に訂正します。

他の方のご指摘通り、「ソフトウェア工学」と表現した方がより妥当な時に、
「システム工学」と用語の誤用をしていました。どうもすみません。
「システム工学」と「ソフトウェア工学」を一応ちゃんと使い分けている積りだっ
たのですが、他にも誤用して書いたかもしれません。

尚、
「経営学事典」によれば、「システム工学」「システム理論」などという「シス
テム」の概念・視点が認められるようになったのは、
1968年の数理生物学者ベルタランフィの「一般システム理論」の発刊
またはその少し前からのベルタランフィ、生理学者ジェラード、経済学者ボール
ディングらを中心に結成された「一般システム研究会」の発足とその機関紙の発
行
が始まりと言えるとありますが、
「システム工学」と言ってしまうと他の工学分野を含む大きな概念なので、学問
分野として意識される前から、ソフトウェアなど全く存在しない時からあったと
言え、経営学とどっちが早いか微妙ですね。

というよりも、上に書いたように、私には「システム工学」と「経営工学」は、
殆ど違いがない学際的分野と思えます。日本の大学での区分けには関係なく。
同じ事に対する視点の違いで、視点の操作によってはほぼ同じモノになってしま
うのではないでしょうか。究極の目標は「科学の諸成果の現実の経済活動への応
用」となるでしょうから。
どちらも「軍事の末裔」の性格が濃い分野でしょうね。

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釘本浩樹
<kugimoto@....jp>