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Date:  Tue, 16 Apr 2002 14:11:25 +1200
From:  Masaaki Murakami <mmura@....jp>
Subject:  [XP-jp:03362] Re: ソフトウェア職人気質
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <200204160211.AA00372@....jp>
In-Reply-To:  <20020416005134.37CD.ANC04864@....COM>
References:  <20020416005134.37CD.ANC04864@....COM>
X-Mail-Count: 03362

ごうぎさん,こんにちは。 村上です。

On Tue, 16 Apr 2002 00:51:36 +0900
ごうぎさんのメールより:
>はい、従来の管理者という役割のように、管理者と見えてしまうような
>責務が目立つようなものでなく、親方という呼び方をされるような責務
>だけを残すといった工夫がされたものに代替されないかなと思っていま
>す。

従来の管理者という「入れ物」の中身を代替して,親方という呼び方
をされるような責務を残す,というのは管理者に実務の実行を行わせ
ることを意味するのではないでしょうか?
それを実現しようとした場合,職人の技術知識,ノウハウを管理者と
いう入れ物の中に注入しないといけません。
職人のスキルとはそんな簡単なもんじゃないと思うのですが。
従来の管理者には,たまたま「1.ボスとしての役割」があるものの,
彼らはその力を正しい方向に使うスキルが無いのです。
(決して管理者が無能だと言っているわけではありません。
 管理者は「2.インタフェースとしての役割」というとても奥深い
 スキルの保持者なのです。 そういった有能な人材に対して,他の
 専門スキルを併せて要求することは,人間国宝の陶芸家に対して
 日本一のラーメン屋に弟子入りしろと要求するようなもんです。)

私はむしろ,従来は管理者という入れ物の中に入っていた「1.ボス
としての役割」を熟練職人という入れ物に移し替える,という話であ
ると認識しています。
(そして現状では軽視されている「2.インタフェースとしての役割」
 に注力できるよう管理者を身軽にするわけです。)
こちらの方が現実性が「まだ」あるように思えます。

同じ事を違った角度から表現しているだけだと思われるかもしれませ
んが,以下の点だけは強調しておきたいのです。

・管理者という職務は,開発者というキャリア・パスの延長線上には
 存在しない。 (なぜならばインタフェースとしての役割を演じる
 上で必要となるスキルは,開発経験があるだけで培えるような甘い
 ものじゃないから。)
・開発者という職務は,管理者というキャリア・パスの延長線上には
 存在しない。 (なぜならば開発者としての役割を演じる上で必要
 となるスキルは,人間関係を扱うスキルの経験があるだけで培える
 ような甘いものじゃないから。)

>それは、職人を大切にする文化を創ろうとした場合に、その結果として
>その職人の中でより、優秀な人たちとか、リーダー的素養を持った人た
>ちといった識別がされていくものと考えます。
>そして、そういった人たちが、自然と職人を纏める力を持ってくるよう
>に思えるために、そのときそこに従来の管理者という存在がまだなお残
>っているとするならば、個人的に、なじまないように思うのです。必ず
>そこの大きな壁ができそうに思えます。

高給取りとなる熟練職人を作業に没頭させようと思った場合,「2.
インターフェースとしての役割」は熟練職人ではなく誰かに任せるこ
とになるでしょう。 そうやって作業効率を最大限に上げようとする
わけです。 (この辺りは欧米人的な発想なのかもしれません。)
このため「2」の役割を担当する管理者が現場から不要になることは
無いのではないかと思います。

>「ソフトウェア職人気質」では、管理者という役割をどうしても残そうと
>しているように感じ、そして、管理者になぜか厳しい。

管理者に厳しいような所ってありましたっけ? 私は従来の管理者に
は1,2,3という役割があったが,本来は「2」に注力すべきであ
る(「3」については言及無し)という点が強く印象に残っているの
で,管理者に厳しいという感想は持っていないのですが。
熟練職人は管理者よりも報酬が高くて然るべきという記述はありまし
たが,管理者の報酬を減らすという話も無かったですし。

>また、日本の職場では、管理だけをする管理者ではない、親方的な方も多
>いのではないかと思います。そういう方を、この本を読んだあとも、管理
>者と呼ぶのは、何か寂しい感じがします。

実際に実務を行っているのであれば,その人は「インタフェースとし
ての役割,庶務としての役割まで押しつけられている職人」と呼ぶべ
きでしょう。 いずれにしても寂しいかもしれませんが。 ^_^;

ちなみに鎌田さんが上げていただいた関連図ですが,管理者に他システム
との摺り合わせという職務があることを考えた場合,

親方@@@@@@@@@@@@@@@@@親方(他システム)
│@@@@@@@@@@@@@@@@@@@│
├─────────┬─────────┤
│@@@@@@@@@↓@@@@@@@@@│
↓@@@@@@@管理一般@@@@@@@@│
プログラマー@@@@@@@@@@@@プログラマー

こうなってしまい,管理者が親方間の板挟みになってしまうのでは
ないでしょうか? (可哀想,,,^^;)
ということで,管理者が何らかの調停者になる場合を想定すれば,
親方とは対等の立場でなければならないと思っています。
そして,親方(職人)はプレゼンテーション技術を駆使して管理者
を納得させなければならないのです。 (管理者が技術知識,ノウ
ハウを知っているかどうかは,もはや関係ないわけです。)

親方─────管理者─────熟練職人(他システム)
@│@@@@@@@@@@@@@@│
@│@@@@@@@@@@@@@@│
@│@@@@@@@@@@@@@@│
@↓@@@@@@@@@@@@@@│
職人@@@@@@@@@@@@@職人


それでは。

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Masaaki Murakami  mmura@....jp