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Date:  Mon, 04 Mar 2002 13:01:35 +0900
From:  ANC04864 <ANC04864@....COM>
Subject:  [XP-jp:03278] Re: パターンランゲージについてのおしゃべり
Sender:  ANC04864 <ANC04864@....COM>
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <20020304124230.C42F.ANC04864@....COM>
In-Reply-To:  <20020301112234.8B30.ANC04864@....COM>
References:  <20020227132541Q.hiranabe@....jp> <20020301112234.8B30.ANC04864@....COM>
X-Mail-Count: 03278

皆さん、
こんにちは、ごうぎです。

On Fri, 01 Mar 2002 11:22:46 +0900
ANC04864 <ANC04864@....COM> wrote:
:
> 少し前に、CMMとXPの論争がありましたが、これについてはどちらが良いとか
> 悪いとかについては僕は今は関心はありません。それよりも、CMM的な改善とXP
> 的な改善に違いがあるように思えるのだけどそれはどのあたりかに関心をもっていま
> す。それを捉えるためにトヨタ生産方式も並列して知ろうとしています。それはトヨ
> タ生産方式は、CMM的な面とXP的な面の両方があるように思えからです。
> XP的な面は、完璧などありえないので変化を抱擁せよという事を前面に出している点
> から来ているように感じています。
> ただ、ここら辺は、まだ勘のレベルなので、はっきり主張できるような根拠はまだあり
> ません。ただ、過去CMM的なことを何度かやったりやろうとして失敗して来た中で、XP
> が持つ良さも併せ持っていたらもっとうまくいったのではないかなと感じる所があり、
> 一つひとつのプラクティスそのものよりもXPを作り出した核の部分に興味を持って
> います。

e-Japan構想により、CMM導入については割と差し迫った状況になっているようですね。
昨晩、同業者の知人と御酒を飲んできたのですが、ちょっと関係する話題になりまし
たので、その内容をご紹介させてください。
大体次のような感じ。

知:「うちの会社もついにCMMを導入しなくてはという話になっているんだ。」
合:「そうなんだ、がんばってくださいね」
知:「とりあえず、2年でレベル3を目指そうとしているんだ」
合:「それは、どうやって見積もったの?」
知:「上からのお達しなんだ」
合:「そうなんだ。IDEALって知ってる?」
知:「知ってるよ。IDEALでやろうとしてるんだもの。」
合:「2年で出来そう?」
知:「IDEALはよさそうなんだけど、実際の所どれぐらいで目標に達成できるか
      わからないんだ。」
合:「そうでしょうね。トヨタはトヨタ生産方式と言えるようなものになるま
     で20年掛かったそうだよ。ソフトウェア開発は成熟度レベル5になるの
     にどれぐらい掛かるんでしょうね。組織毎に違うでしょうし、世の中の動
     きにも影響されそうですし・・・色んなことに影響を受けそうですね。」
知:「・・・。ひたすら段階的に積み上げるしかないんでしょうね。」
合:「CMMの導入の見積もりが出来る組織だったらCMMの導入は不必要か
     もしれないね。」
知:「そうなのかもね。」
合:「そうそう、実は、もう記憶が曖昧だけど、7年前だったかな、インドに
      発注するのがブームの時、前勤めていた会社で、CMMレベル5のインドの
      会社への発注をしたんだけど、マネージャがめちゃくちゃ優秀でしっか
      りしてたことを思い出すよ。」
知:「へぇーやっぱりCMMレベルの高い会社は違うんだね。」
合:「それは、随所で感じたよ。マネージャは特にリスクを取る事に慎重
      だったな。プロジェクトの成果が給料にダイレクトに反映されるん
      だとか言ってたよ。
      困ったのが、実装段階で、技術の担当者が、とにかく解決が容易で
      ない問題に遭遇すると、すぐ「それは実現手段がない」といったこ
      とをいうんだ。
      で、こちらで調べてみるとやり方はあるんだよね。
      その後も、違う問題でまたすぐ出来ないっていうんだ。これには参
      った。ここら辺に妙なモノを感じたよ。最初は、インド人の気質なの
      かなとかも思ったけど、期限を厳守するためにそうなってしまってい
      るなということが段々わかってきたよ。マネージャが厳しく管理して
      いるんでしょうね。
      相談してもらえれば妥当と思えば期限を延ばすのは吝かではないのだ
      けどね。
      自社で作っている製品を見る限り技術力はある会社であることは間違
      いないと思うのだけどね。
      まぁ、プロセスはしっかりしていて、とにかく期限は守ってくれて、
      それなりのドキュメントは書いてくれるのだけど、出来上がったもの
      は求めていた品質とは違っていて、それはシステムの限界だとかいう
      んだけど、こちらから改善を提案して延長しなんとか利用できるレベ
      ルにして終わったのだけど、やっぱりその後にさらなる品質を出す事
      ができるつくりになっておらず結局後からすべて作り直した・・・。
      それ以来インドに発注するのは慎重になったよ。重要な所は自分達で
      開発しなくっちゃだめだという教訓を得たよ。
      今ではその会社もあの頃より改善されてはいると思うし・・・まぁ互
      いに不慣れだったという事もあったのでしょうけど。
      なんだか、レベル5を取得した後で、レベル5の本当の習熟がはじま
      るようで、変な話ですよ。
      こちらとしては、ただただ自社製品を作った時のような、取り組み方
      で作ってもらえれば、それでよかったのだけどね。良い物を作るため
      の難しさは知っているので、必要であると理解できれば期限の延長は
      吝かでないのだけどね。」
知:「日本でもそういうおかしな状況を迎えそうですね。CMMって意味な
      いのかな?」
合:「CMM自体は意味がないものじゃないと思うよ。
      うまく利用できていなかったという事だと思うし、ビジネスと絡めると
      上手く利用し難い何かがあるようにも感じるね。
      何にしろ、あっという間にレベル5を取得しちゃうんだから。
      認定があることによる発生する問題は根深いですね。」
知:「そうですね。」
合:「実際の習熟度で認定を受けるのではなく、CMMを理解しあたかも習熟し
      ているように体裁を整えることでもって認定を受けているところは、
      多いのでしょうね。」
知:「割合はわからないけど、そういう所はあるのでしょうね。」
合:「今思い起こすと、CMMの本(成功するソフトウェア開発)の冒頭に出て
      くる、無意識で行動できるレベルまで習熟されたプロ野球チームでも
      ないし、アマチュア野球チームでもないし、別物だったな。なんと喩え
      ればよいのやら。」

〜だらだらと続く〜

             *   *   *

「CMMを導入すべし」という上からのお達しによりCMMを導入をしようと
いう場合には、「あるレベルに達するまでの期間」というのが決められている
ことが少なくないのではないでしょうか?
こういう場合は、結局意味のない導入になってしまうということが言われます
が、現実はその意味のない導入となってしまっている所が多く、そうなってし
まう原因にはとても根深いものがありますね。

上記でちょっと触れた過去に一緒に仕事をした会社では、実態が本当に認定さ
れたCMMレベルに習熟する間、外に対しての見かけをそのレベルであるように
見せかけるために、超大リーガークラスの人が必死になって水漏れの補修や増
水による決壊を防ぐために働いたりとしており、顧客満足のためのリスクを取
り切れないぎりぎりのところで仕事をしているという印象があります。

成熟度レベルを偽らず、焦らずじっくり文化を育てていく覚悟が必要なのだろ
うと思いますが、その文化を育てる時間感覚とビジネスの時間感覚がかなり乖
離しているので、気持ちとの折り合いをつけるのが難しく、結局はビジネスを
立てて、どこかで無理をしてしまうことになるのでしょうね。
ここら辺は、同業者とのゲーム理論(囚人のジレンマ)が絡みそうです。

あっという間に、成熟度レベル5を取ってしまう様子を見ていると、トヨタ生
産方式のプロが製造業にその方式を導入支援してもそれほどうまく導入できな
いという状況があることが思い浮かびます。
あてがわれた指標やフレームワークから作られたシステムを使うことにより、
すぐにあるレベルに達することができるのでしょうけど、その後発展させてい
く力は組織としてみた場合にはとても弱いでしょう。

そういう事をわかっていても、実際には、ビジネス上、その折り合いを付ける
事が難しいのでしょう。
そういう実態を見ている人は、CMM自体の理屈面でのよさは理解していても敢え
てアンチCMMの立場を取る人も多いのでしょうね。

営業手段とすることだけが目的になってしまって、現場でうまく利用できてい
ないモノって昔から割と多いですね。
「OOできます」とか「Javaできます」というのも、そのように利用され、
仕事をする中で学習することを目論んだ話はよく聞きますね。f^^;
開発プロセス習熟度の嘘の場合は、現場に与える衝撃は遙に大きいですが。

あと、飲みでは、XPの話も少しでたのですが、XPとCMMを比較対象と考
えておられたので、そういう風に理解される人が多いんだなと改めて思いまし
た。将来のあるべき姿を描いたりXPを導入する理由を明確にせずに、とりあ
えずXPを導入することだけを目的としている所は多いのかな。
また、XPのプロセス自体も変化させていくものと捉えていない方が割といら
っしゃる様に見えるのですが、個人的にはCMMの考えと同じようにXPのプ
ロセスも自分達に合うように改善を繰り返して成熟させていく必要があると思
っていますので、動機が割と純粋で、改善というものがまともに出来て、将来
の到達点のイメージが共有できていたならば、XPを出発点にしようがCMM
のIDEALを使って進め様が、(自力で改善を繰り返していったトヨタを見てい
ると)、限りなく同じ所に到達していくのではと思います。安易でしょうか?

仮に、それが真であるとすると、「XPからはじめるCMMの成熟度レベル5
へのアプローチ」というやり方により、営業道具としない為に、有効ではとい
う意味で、すくなくても現場が死んでしまうことはないのではと期待します。
XPが営業道具として使えるという風潮が出てくるとこのアプローチも怪しくな
りますが。

トヨタの車作りの歴史は、最初は模倣から入って、改善改善の繰り返しで、
「顧客満足重視(TQM)」→「顧客満足+従業員満足の両方を重視」へと変遷
していっているようです。
CMMはTQMベースなので、トヨタの思想の方がTQMより一歩先にいっているよう
に僕には見えます。
けれども、XPは従業員満足(活人化)が最初から入っているので、CMMを導入
する場合に、CMM(TQM)とうまく融合させることができると、「顧客満足+従業
員満足」を大切にしたプロセスや職場作りができるんじゃないかなと期待します。

さらに、トヨタの「顧客満足(TQM)」→「顧客満足+従業員満足」のシフトは
真っ只中という状況のようですが、このシフトが必要になった背景(労働条件
云々はありますが、結局の所、創造性云々に行き着くところでしょう)は、CMM
導入でも検証する価値はありそうに思えます。

以上取り留めないですが。
-- 
Shigeru GOUGI <ANC04864@....JP>
http://www.post.self.ne.jp/~gougi (クラッシュ中)