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Date:  Sun, 10 Feb 2002 14:10:13 +0900
From:  "hasegawa" <hasegawa@....jp>
Subject:  [XP-jp:03199] Re: トヨタ生産方式と XP
To:  <extremeprogramming-jp@....jp>
Message-Id:  <01d401c1b1f1$38817f10$1a987cd3@....jp>
References:  <001201c1b0ce$54f70170$4813fea9@....jp>
X-Mail-Count: 03199

長谷川@テクノポートです。

----- Original Message ----- 
From: "M.Horiuchi" <horiuchi@....jp>
To: <extremeprogramming-jp@....jp>
Sent: Saturday, February 09, 2002 3:27 AM
Subject: [XP-jp:03197] Re: トヨタ生産方式と XP

> > ベルトコンベア方式には大きな弱点があります。ベルトコンベア方式で
> > は、各工程の時間が均一でなければならないので、最も時間のかかる工
> > 程と同じ時間を他の工程にも割り当てる必要があります。工程数が20で、
> > ある工程が20秒、他の工程が10秒かかるとすると、ベルトコンベア方式
> > では400秒かかることになります。一人屋台生産方式では、各工程に5割
> > 増しの時間がかかったとしても315秒ですみます。
> ...(以下略)...

確かに、椅子に座って作業をする作業者固定型ベルトコンベア方式だけを
見ると、濱井さんの見方も成立するかもしれません。しかし、私が
トヨタ工場を見学したときは、全く異なる風景を見ました。

#昨年、合木さんがトヨタ工場見学の企画を立ててくれたので、
#いっしょに見学に行かせてもらいました。その節は大変
#お世話になり、ありがとうございました->合木さん。

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#以下ではベルトコンベア方式をライン方式で統一させてもらいます。

トヨタ工場でのライン作業を見ていると、それぞれの作業によって、
割り当てられているラインの長さが違うのに気が付きます。つまり、
時間の長さを空間の長さに置き換えられているということです。
これは当然、作業者が固定された椅子に座り込むのではなく、
生産対象といっしょに動くことになります。

たとえば、ある工程には10mの空間が割り当てられ、それよりも
短時間で済む工程には5mが割り当てられているといった具合です。
このため、工程時間の長いものが短いものに影響を与えることは
ありません。そこでは、生産が、ライン速度とライン上に置かれた
生産対象の間隔により決まるようです。速度が一定なのは、人間が
生産対象にアプローチしやすい速度があるからでしょう。

逆にここから、作業者固定型ラインを考えると、空間を固定化するから
時間の差をコントロールするのが難しくなっていることに気づきます。
トヨタの場合、時間の差は当然であり、そのためにこそ空間を動的に
配置する方法をとったように思います。

もちろん、これはほんのさわりに過ぎません。
時間長が空間長に変換されると、今度は長い空間の移動が
問題になってきます。そして、その作業に大きな道具や
多くの道具が必要な場合、それも移動しなければなりません。

これに対してもうまく対処していました。ホースを必要とする
道具の場合は、上にレーンを用意し、そこに道具をぶら下げて、
軽い力で移動できます。戻るときは自動で戻ります。
道具箱の場合も、移動しやすいものが用意されていました。

場合によっては、座った状態で作業をする方が効率が良いケースが
ありますが、その場合も、レーンを使ってスムーズに動く椅子が
用意されていました。また、集約的な作業なのかもしれませんが、
エンジン部分の組み立ての場合は、ラインの両側に作業者がいて、
うまくペアになって作業をしていたと思います。

さらに、ドアは組み立て作業をするには往々にして邪魔なので、
ラインも上下二段のものになっていました。天井に近い所に
無人ラインがあり、ドアが流れています。

このようなライン方式もあるので、一概にライン方式の弱点とは
言い切れないように思います。ステレオタイプ的な見方しか
できないようになっていることが問題なんだと思います。

屋台方式は、逆に小さすぎて、多くの人で作業を再分化する
ことが適合しないケースなんじゃないでしょうか。つまり、
ラインのメリットを余り生かせない。だから、それに適合
できる方式として屋台方式に辿りついたような気がします。

トヨタ見学は、一度では理解するには難しいものでした。
その時には、作る側と作られる側が見えたのですが、
それ以上考えることはできませんでした。
今ではそのコラボレーションが見事に組み立てられて
いることが肝なんだとわかってきました。

-- 長谷川(hasegawa@....jp)