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Date:  Fri, 8 Feb 2002 15:45:19 +0900
From:  HAMAI Kyoichi <k-hamai@....com>
Subject:  [XP-jp:03193] Re: トヨタ生産方式と XP
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <200202080645.PAA06591@....jp>
In-Reply-To:  <usn8eyw4q.fsf@....jp>
References:  <usn8eyw4q.fsf@....jp>
X-Mail-Count: 03193

濱井です。
2002/02/07 09:27:01 +0900にyyamada@....jpさんが送られた
メールに関する返信です。

>で、一人屋台生産方式では個人を多能工化させ、ある一部の工程という部分では
>なく、工程にまたがった全体で効率を上げるという手法をとることにより、生産
>効率が従来よりアップすることをねらったということでした。
>しかも、この方式では個人が熟練者となるので生産拠点が国内に保持できるわけ
>です。
>
>TV では 試みに選ばれた社員の周りに、多工程の作業ができるように屋台のよう
>な作業環境が作られ、その位置を調整したりして作業がスムーズにゆくように自
>分でカスタマイズする様子が写ってました。
>初めはなかなか生産効率が上がらなかったのですが、徐々に上り、最後には、従
>来のベルトコンベア方式の生産効率を追い越すというところで、結構感動しまし
>た。

ベルトコンベア方式には大きな弱点があります。ベルトコンベア方式では、
各工程の時間が均一でなければならないので、最も時間のかかる工程と同じ
時間を他の工程にも割り当てる必要があります。工程数が20で、ある工程が20
秒、他の工程が10秒かかるとすると、ベルトコンベア方式では400秒かかる
ことになります。一人屋台生産方式では、各工程に5割増しの時間がかかった
としても315秒ですみます。
# 類似の弱点を現在のマイクロプロセッサのパイプライン方式も抱えています。

この製造時間の長さは、在庫の増加なども伴い生産性を悪化させます。
もちろん、単純作業によるやる気の低下や設備コストの増大もベルトコンベア
方式の弱点です。


ベルトコンベア方式における各工程の作業時間と割当時間とのミスマッチング
と同様なことが分業では常に起こり得ます。

>> ・アーキテクト,プログラマ,テスタという区別がない

区別がある場合、各人員の比率と必要となる工数の比率が一致することは
まずありません。むしろ、アーキテクトは足りないがプログラマは余っている、
プログラマは足りないがテスタは余っている、というような状態が発生する
方が普通です。こうなると、全体から見ると効率がいいとはかぎりません。

さらには、ソフトの開発の場合、分業にはコミュニケーションのための文書化
のコストが発生します。ますます、分業しない方が有利になります。

生産性を議論する場合、全体としての生産性を考えなければなりません。
部分的な見かけ上の生産性のために、全体の生産性が犠牲になっていることが
少なくないからです。


>この辺、ソフトウェアでも開発工程を海外に移す動きがあるので、XP により
>生産効率を上げるというシナリオは有効かもしれませんね。

それどころか、今のやり方では、むしろ開発費用当たりの生産性を下げ
かねないと思っています。