Index: [Article Count Order] [Thread]

Date:  Sat, 26 Jan 2002 13:48:08 +0900
From:  "hasegawa" <hasegawa@....jp>
Subject:  [XP-jp:03137] XPとCMM
To:  <extremeprogramming-jp@....jp>
Message-Id:  <063d01c1a624$a6d27b50$1a987cd3@....jp>
X-Mail-Count: 03137

長谷川@テクノポートです。

まずは、今起こっていることについて。
野球の観戦を楽しんでいたと思っていたら、
いつのまにか円形闘技場で剣闘士達の死闘を
観戦していた、そんな感じかもしれません。
喜ぶ人もいれば、目をそむける人もいます。

おそらく、対立している両者の間には、
違いよりもはるかに共通することが多いはずです。
しかし、その少ない違いにどうも固執する傾向があるようです。
まるで最終攻防線は死守しなければならない、とでも。
そして、そこからまた、本来対立などしていなければ、
とてもそのように解釈などしなかっただろうと思われる
メッセージまで、その意味を変質させてしまいます。

注意しなければならないのは、その違いではなく、
そこから繰り広げられる一連の出来事です。
これはゼロサムゲームではなく、全員が勝者どころか
全員が敗者へと続く道です。こうなるとXPやCMM
どころではなく、それよりも前に対立を解決する能力、
習慣を身に付けることが必要となってきます。
これは、開発の現場にも当てはまります。

対立の難しいところは、常に片方が100%間違っていると
言い切れないところにあります。これは聞いている人が
介入することを抑制します。また、当事者自身がある種の
ジレンマに苦しめられていることも注意すべきです。
これが感情的な面に大きな影響を与えることになります。

対立を解決するには、個人の問題にしてしまうことを
絶対に避けるべきです。これは倫理的な意味で言うのではなく、
結局は何も解決したことにはならないからです。
表出した対立は、大抵両者が立つ場所がもつ深く根本的な対立から
生み出されます。たとえ解決できなくとも、問題をそこに
定位することが大切だと思っています。

私はその対立の一部が、スレッドの始まりにあたる「CMM vs XP」に
あるような気がしています。それじゃ、今と何も変わらない
じゃないか、というと、そうでもないと思っています。
少なくとも、このMLの主題であるXPにもっと関係してきます。

私は、XPとCMMは全く対立するものと考えています。
現場で実践する場合には、両方を同時に採用することなど、
到底不可能だとさえ思っています。

CMMは調査から構成されたものです。つまり、ある種の結果から
理想的なプロセスを導出しています。欠如していると感じるのは、
生きられた過程/構築過程というものが余りに客観的にしか見て
いないと思えることです。これは、実際に実践した場合に、
様々な副作用とでもいえるものに出会うことになると思います。

陸上で潜水艦を作って、海の中で利用するというケースに
ある面で似ています。海そのものをよく知らずに、いくら
いい潜水艦を作ったとしても、海の中に放り込んだとたん、
様々な予期せぬことに出会い、最悪利用不可能になります。
負の副作用が多すぎるためです。

XPの主張の面白さは、これとは対極にあると思います。
それぞれのプラクティスをそれ自体じっくり考えても、
すぐに壁にぶつかります。しかし、それを開発の現場に
投入したとき、想像の域を越えた何かが起こるように思います。
これは偶然ではなく、もともとXPは、想像では困難な
正の副作用を利用することを目論んでいたように思っています。

あるものを客観的に綿密に調査しても、それをある場に
投入したときのどのようになるかはよくわかりません。
そして、私達が実際に求めているのは、自分達の場にうまく
適用できる解決策です。その上、その「ある場」というのは、
私達人間から構成されたものです。

その「場」の相互作用は、今までの方法では解明できません。
複雑系と呼ばれているものが、チャレンジしていますが、
私達の場でうまく利用できるには、まだまだ時間がかかりそうです。
結局、汎用マスタプランというものは、単に妥当性の量ではなく、
根本的に、私達が望むものと、そこから実践するプロセスと、
その結果の関係を間違ったものにしてしまうと私は考えています。

この辺りは、AlexanderやDemarcoを読まれている方とっては、
それほどとっぴもない考えでもないと思っています。

最後に、ROMオブザーバーの方が意見を述べられたことを
うれしく思いました。


-- 長谷川(hasegawa@....jp)