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Date:  Thu, 8 Nov 2001 16:18:44 +0900
From:  "hasegawa" <hasegawa@....jp>
Subject:  [XP-jp:02758] XP セミナーレポート
To:  <extremeprogramming-jp@....jp>
Message-Id:  <008501c16825$9cafcc50$660aa8c0@gp6x866>
X-Mail-Count: 02758

長谷川@テクノポートです。

昨日、大阪でXPのセミナーが開かれました。
セミナーがあるというのは、このMLで、平鍋さんの
メールで知りました。で、かなり個人的なものですが、
そのレポートを書いてみました。

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    XP(エクストリーム・プログラミング)セミナー
    日時:平成13年11月7日(水)13:30-17:00
    会場:NEC関西ビルB1F C&Cプラザホール
    URL :http://members6.tsukaeru.net/xpjug-kansai/index.html
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NECさんの入り口を入るとすぐ近くに、ちゃんとXPセミナーの
カンバンと、関係の方がいて、会場へはスムーズに行けました。
受付で、登録メールを印字したものと引き換えに、資料をもらいました。
1時前だったので、まだ席はかなり空いていました。
#受付開始とセミナー開始を間違えて早く行ってしまいました(^^;。

始まる頃には、ほぼ会場が満杯に近い状態になりました。
一応、定員が300名となっていましたが、正確な数はわかりません。
でも、ちょっとすごいなと思うほどの人数でした。
興味の度合いはそれぞれでしょうが、これほど関心を持つ人が
関西にいるとは知りませんでした(^^;。

13:30〜13:45 Opening 開会挨拶と関西支部活動報告

このセミナーが日本XPユーザーグループの関西支部の活動のひとつで
あることをはじめて知りました。私は、日本XPユーザーグループに
入っていないので関西支部があることすら知りませんでした(^^;。
こういった組織は東京にしかないと、たかをくくっていたんでしょう。
関西もなかなかやるな、と感じた次第です。
#長瀬さんもKeynoteで、これだけ多く人が集まったセミナーは
#初めてというふうなことを言っていました。

13:45〜14:35 Keynote XP概説

長瀬さんのXPに対する全体的な解説ですが、今年のOOPSLAに行ったときの
感想などを交えながら、今のXPの状態がわかりやすく概観できたと思います。
私は余りメモをとらないのですが、次のようなメモをしていました。
 ・開発コストとランニングコストの対比
 ・イテレーションが2〜3week
 ・ファシリティ戦略:場所+机+模造紙
 ・生のフィードバックの重要性
 ・測定、メトリクスの妥当性→見積りの信頼性
 ・ペアプログラミング→技術のレベルアップ
 ・YAGNI:ビジネスからの視点(いくら儲かるか)
最後に、OOPSLAからの感想で、XPのような手法がUSでひとつの潮流となり、
XPもそういうアジャイルな手法の一種と位置付けられるようです。
他にもクリスタルなどがあり、これも近々日本にもやってくるだろうと。
また、OOPSLAでCoplienがこういったアジャイルなものの区別について、
水着をメタファ(?)にして説明していたことも紹介されました。
つまり、XPは競泳着でもっとも早く泳げるためにチューニングされている、
それに対してRUPは、いろいろなオプションを用意し、利用者がそれを選ぶと。
#RUPがアジャイルであるとは、知りませんでしたが(^^。


14:35〜14:45 休憩

若干、時間がずれてはいますが、大体プログラム道理に進んでいます。
この休憩の間、喫煙所で平鍋さんと立ち話をしました。久しぶりに会ったので、
取りとめもない話になりましたが、平鍋さんの元気そうな顔が見れてよかったです。

14:45〜15:35 Special Session XP実践レポート

平鍋さんが実際にXPの手法を実践した時のレポートです。既に
インターネットに読んでいたのですが、やはり生の声で聞くと印象が
全然違いました。平鍋さんは、本音というか、本当に感じたことをちゃんと
述べるので、聞いていて肩が張ることなく、楽しく拝聴できました。
ちょっとした私のメモは、次の通りです。
・社員200名、オブジェクト指向経験2,30人、XPはもっと少ない
・このプロジェクトは本来100人月ほどのもの。
・パイロットプロジェクトだったが、実開発には...。
・カードの必要性:手渡しやすいこと
・テストはMVCのモデルしか、行えなかった。
 ビューに関しては、難しいと感じた。
 またビューにはロジックを含ませないこと。
・同じ部分に出会った場合は、後の者がリファクタリングをする。
・XPはトラックナンバーが非常に高い。
・テストファーストを実践すれば、テストの書きやすい設計を
 するようになる。
・ホワイトボードは必須。無しではほぼ不可能。
・ポイント見積りを繰り返すことにより、予測可能になる。
・ストーリーカードはユースケースより粒度がそろう。
・ペアプログラミング:新人教育に大きな効果
・コーディングの統一性のため、用語対応辞書を作成。

印象に残ったのは、ペアプログラミングの効果です。
ある程度は予測できましたが、やはりXPのそれぞれの実践には
創発的なものが多いので、常に予測を上回るようです。

15:35〜15:40 休憩

この休憩では、平鍋さんが提供するために持ってきたオブジェクトハンドブック
の小冊子が会場の前に置かれたので、どどどどどっと人だかりになりました。
あっという間になくなって、人が少なくなった頃を見計らって、
もうひとつの提供物、実際に利用された模造紙を見に行きました。
こういうラフなものでも、十分機能するんだと、感心しました。
#そこで、某勉強会のメンバー2人に出会うことが出来ました。

15:40〜16:30 Main Session 

●XPのビジネスメリット
NECの牛尾さんのビジネスという観点からXPを見た場合の捉え方が
実際の具体例(経験)を通して、紹介されました。
#このMLにも登場されるのでお名前は知っていましたが、
#初めてお目にかかれました(^^。
単刀直入、大阪の商売人ですね、でも、それがまたよかったように思いました。
背景、前提条件(オブジェクト指向、UML、デザインパターン)を通して、
XPがビジネスとして通用するには、必要な技術的インフラが必要で、
それがそろったとき、XPは本当に効果のある手法となる、ということでしょうか。
メモは、以下の通りです:
・要求仕様作成の難しさ:ユーザー自身提出できなくなった。
・最終段階での変更:行間仕様
ちょっとメモが少ないですが、話術巧みなもので、そちらの方に気がいって
しまいました。単に有効な新しい手法というのではなく、それには前提となる
技術があること。これをちゃんと言っていること。そして、そういうことさえ
満たせれば、こんなに開発がよくなる、そしてビジネスとして十分利用する価値がある。
これは、まさにXPを採用する場合の上司への説得材料になると思いました(^^。

●XPと組み込みソフトウェア
驚いたのは、土屋さんがXPと出会って、それを実践するまでの早さでした。
XPエクストリーム・プログラミング入門が出たのは、昨年の暮れで、
今年Kent Beckのセミナーが開かれたのが4月頃ですか。それに参加して、
適用、まことにアジャイルですね。それと、自分の誤解に気づきました。
XPのいいとこ取りにどれほどの意味があるのか疑問に思っていたのですが、
土屋さんの話を聞いて、これはそんなんじゃなく、利用できない場合は、
それに代わる工夫をしたり、徹底して現場に適合するものにするという
意思の現れのように感じました。セミナーが終わり、立ち話をしていた時、
平鍋さんとがいみじくも言ったように、トヨタのカンバン方式のような、
そんな工夫があるんだと、感心しました。
実際、土屋さんの目の前にある環境は、XPに出てくる環境とはかなり違います。
対象は通信モデムのファーム開発です。これは製品の回転が速く、かつユーザーとの
関係も若干違うように感じます。言語にしてもC++ではなくC言語です。
開発環境にしても、Windows用とマイコン用のコンパイラを使う、
テストもドライバ+スタブと使ったものと、ボードとプローブで結んでする、
そういった2重化が付きまとうものです。こういう状況なので、xUnitも
自分で作られたようです。また、ちょっとしたことですが、トラッカが
巡回魚の如く開発者を回るときには、「できた?」ではなく、「問題ない?」
と聞いてみるというように、配慮の精神もあります。
そのほか、技術的な面についても述べられ、なかなかためになりました。

16:30 Closing
無事、プログラムが終了しました。
ロビーで私と某勉強会の仲間で少しおしゃべりをしていました。
そこに平鍋さんもきて、いっしょにしばらくおしゃべりをしました。
私としては、セミナーに参加して、なかなかよかったと思いました。

全体を通じて感じたのは、やはりペアプログラミングが現状の開発の
問題点のひとつ、技術の伝達につながるひとつの方法だと共通して
認識されつつあることでした。もちろん、この創発性は単にペアプロに
限らず、他のプラクティスにも隠れていると思います。それを実際に
知るには、やはり実践するしかないのかもしれません。

(追伸)
書籍販売の所で、宣伝だけ(販売無し)の本がありました。
『extreme Programmingテスト技法』(xUnitではじめる実践XPプログラミング)
です。こういった本が欲しかったので、チラシに載っていた本屋に寄ったのですが、
2軒とも置いていませんでした。1軒目は売り切れで、2軒目はまだ入荷して
いないといわれました。確か、翔泳社の人は、もう置いてあると...。

-- 長谷川(hasegawa@....jp)