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Date:  Fri, 21 Sep 2001 16:00:36 +0900
From:  hamai@....jp
Subject:  [XP-jp:02585] Re: 生産量
To:  extremeprogramming-jp@....jp
Message-Id:  <200109210700.QAA02310@....jp>
In-Reply-To:  <20010918163528.3F21.HIDETO-I@....jp>
References:  <20010918163528.3F21.HIDETO-I@....jp>
X-Mail-Count: 02585

濱井です。
2001/09/18 16:35:37 +0900にhideto-i@....jpさんが送られた
メールに関する返信です。

>> >最初,リファクタリングのポイント数は,ストーリーの実装とは無関係だから
>> >という理由で実工数ポイントに加算しない,という方針でやってたんですよ.
>> 
>> それを言うなら、そもそも、ユーザが支払うべきなのはそのソフトの
>> 利用価値に対してであって、ソフトの規模や作業工数といったコストに
>> 対してではないということになりますが……。
>
>賛成です。シンプルに言えば、価格は価値と一致すべきだ、と。

それは、ちょっとシンプル過ぎます。価値と価格がいっしょでは
ユーザのメリットが無いことになってしまいます(^^;


>また、同じものが手に入るなら、短期間で納入されるほうにより高い価
>値がある、ということも言えます。ビジネスはスピードですから、参入
>タイミングに間に合う納入は価値です。ところが、人月計算の原価をも
>とにした価格では、遅いほうが高くなるわけですから、おかしな話です。

本来であれば、ユーザ側にとっても、開発側にとっても、少ない工数で
開発できる方が価値があるはずなんですが、人月計算では、低い生産性
で工数をかけた方が開発側には得になってしまいます。

また、人月計算は、ウォーターフォール型の開発方式が生き延びている
原因にもなっています。同じソフトなら早く作った方が価値があり、
ソフトの完成度は時間をかけるほど上がるはずですから、時間と作る
ことができるソフトの価値との関係は下の図のような山形の曲線に
なります。
# ソフト以外にハードの設計書、報告書なども当てはまります。


     /\
    /  \
   /    \
  /      \
 /        \
           作ることができるソフトの価値
 
 ―――――――――――時間


この曲線の頂点付近でユーザにリリースするのが、本来、ユーザにも
開発側にも望ましいのですが、ウォーターフォール型の開発では、
ユーザにリリースするのは一度だけですから合わせるのは困難です。
XPなどでは、何回もリリースしますから頂上付近を捉えやすくなります。
# もっとも、現在が頂上付近であることを認識すること自体が困難ですが。

ウォーターフォール型の開発方式が生き延びているのは、ソフトの価値を
無視しているからです。


>補足すると、濱井さんの言葉である「ユーザが対価を支払うべき、その
>ソフトの利用価値」とは、そのソフトから生じる将来のキャッシュフロ
>ーの総額の現在価値、という言い方をすることができると思います。
>
>これは株や不動産などの資産についての考え方なのはご存知のとおりで
>す。私は、かなりしっくりくると思います。いかがでしょうか?
>
>いろいろと不動産や株との共通点は見つかるのですが、ボロが出そうな
>ので、これくらいにしておきます。

不動産や株と違って、道具としての面が強いソフトは、キャッシュフロー
だけでは価値を説明しにくいように思えます。


>> コストに対して支払うというのは、技術力の向上を抑制する、悪しき
>> 慣習だと思います。
>> # 悪しき慣習の常として、抜け出すのが難しいのですが(^^;
>
>同感です。技術力の向上を抑制する圧力が、遅いほうが高くなる、
>という価格設定から来ているのは間違いないと思います。
>
>抜け出すのが難しい、という点にも同感です。私の考えでは、
>理想的な価格決定をしたければ、自分の会社を作って自分で
>商談するしかないというのが実感です。営業担当者も技術者
>もXP流を理解した会社が無いなら作るほうが早いかな、と。

大きな問題は、コストと異なり価値は客観的に測定することが困難である
ということです。客観的に測定しようとすればするほど主観が
入り込みます。
もう一つ難しいのは、開発側だけでなく、顧客の側も「コストに対して
支払うということが悪しき慣習である」ということを理解しなければ
ならないということです。
仮に担当者が理解してくれたとしても、同僚や上司に、「この程度の
工数しか働いていないのに、何故、そんなに払う必要があるのか」と
批判されかねません。いや、批判どころではすまないかもしれません。